Mei Semonesが語るジャズ、ボサノヴァ、J-POPの融合「これこそ私が望んでいた音楽」
日本人の母を持つニューヨーク拠点のシンガーソングライター、Mei Semones(芽衣シモネス)が、11月3日開催の「アジアで注目を集めるアーティストが一堂に介する」ショーケース・フェス、BiKN Shibuyaに出演する。ジャズ、インディーロック、ボサノヴァなどを融合し、日本語と英語を織り交ぜた歌詞で歌うEP『かぶとむし』で話題沸騰中の彼女が、ミュージシャンとしての歩みを語ったインタビューをお届けしよう。 【画像を見る】史上最高のギタリスト250選 Mei Semonesにとって2022年後半は変化の連続だった。心機一転、ニューヨークに引っ越したばかりだった。新しい恋が芽生えると同時に、親友との友情に終止符が打たれた。その年の春にバークレー音楽学校を卒業し、決して甘くない大人の現実になんとか順応しようとしていた。 「人生の過渡期だった」とSemonesも言う。当時彼女は日本語幼稚園の先生として正規雇用で働きながら、創作活動の時間を取るのに苦労していた。「10時間労働を終えてから作曲をしようと頑張っていた。『こんなのやってられない。自分がみじめだ』って感じだった」。 負担をかかえながらも、その期間にSemonesは不安定な時期と正面から向き合う曲をいくつも書きあげた。それらの作品が今春リリースされた3枚目のEP『かぶとむし』のベースになっている。インディーロックとメロディアスなポップの要素を盛り込んだ『かぶとむし』は、この数年彼女がリリースしてきたジャズベースの実験的な音楽をさらに膨らませ、今まででもっともエキサイティングで完成度が高い。収録にはヴィオラがノア・レオン、ヴァイオリンがクローディアス・アグリッパ、ベースにジェイデン・ラソ、ドラムにランソン・マカファーティが参加。いずれもバークレー時代に知り合った面々で、制作にも携わってもらった。 Semonesの音楽を特定のジャンルに分類するのは難しい。本人も十分承知しているが、とくに気にはしていない。自分の音楽を一言で表現すると?という質問に、本人は「ジャズとボサノヴァにインスパイアされたインディーJ-POP」と答えるきりだ。この1~2年あらゆる層の観客の前で音楽を披露し、韓国のインディーロックバンドSay Sue MeからオルタナポップシンガーBRATTY、台湾のElephant Gymまで様々なアーティストと共演する機会にも恵まれた。だが初めて自分の音楽を聴いたファンがどう受け止めようと、本人はあまり気にしていない。 日本語のタイトルがつけられた新作EPは、ジャズ寄りの「てがみ」、観客を鼓舞するメロディアスなインディーズロック「いなか」「わかれのことば」など、実に多種多様だ。Semonesいわく、最初のころは大学で習ったアルペジオで作曲していたそうだ。楽曲のギターラインの基盤になるアルペジオについて、「なんか気持ち悪いな、って感じだった」と本人。「モダンジャズや即興ではよく使われるけど、ポップソングにはどうなんだろう?って」。