ベガルタ仙台強化部 担当部長スカウト 平瀬智行―憧れの場となるクラブハウスを―
クラブハウスの美味しいご飯がチームの武器に
ーー現役時代、平瀬さんはクラブハウスではどのようなことをしていたのですか。 平瀬「現役時代の私は練習直前にクラブハウスに来て、必要なことをした後はすぐに帰るタイプだったので、クラブハウスでの滞在時間は短い選手でした。でも、マッサージを受ける時は広いスペースでリラックスしながら、のんびりしたいと思っていました。」 ーークラブハウスにおいて、選手のパーソナルスペースが確保できるということは、非常に大事になってくるようですね。 平瀬「そうしたパーソナルスペースには、選手個人の性格が出ますよね。例えば、チームの中にはきれい好きな選手も、そうでもない選手も、両方存在します。私個人としては、選手本人が落ち着くなら、多少は雑然としていてもよいだろうと思いますが、同じような考えのチームメイトばかりではないですよね。 スペースがない場所で、きれい好きな選手とそうではない選手の間の距離が近すぎる状況では、双方ともストレスを抱えてしまいます。そうしたストレスを避ける意味でも、広いスペースのあるクラブハウスは必要だと思います。」 ーー現役を引退され、現在コーディネーターとして強化部で働いている平瀬さんにとって、クラブハウスとはどのようであると理想的だと考えていますか。 平瀬「やはり、スペースが広くて明るいクラブハウスの方が良いですね。現在私はクラブハウスの中で仕事をしている時間も長くて、良い選手を探すためにいろいろな動画やサッカーの試合をクラブハウスの中で見ることも多いので、スペースは広い方が仕事がはかどります。 また、実は今のベガルタの選手はクラブハウスにある食堂でご飯を食べることを、とても楽しみにしているんです。私が選手としてベガルタにいた頃とは異なり、今はクラブハウスの中でご飯を食べることができて、それがとても美味しいと選手たちにも大好評なんですね。 今の私の仕事のひとつは、スカウト等を通じてよい選手をべガルタに引っ張って来ることです。その交渉の際、クラブハウス内に美味しいご飯があるよ、というのは強力なアピールポイントとなります。美味しいご飯が食べられる場所がクラブハウス内にあれば選手の健康管理にも役立つでしょうし、選手同士のコミュニケーションも生まれやすくなります。美味しい食堂があることも、理想的なクラブハウスの条件の一つと言えるのかもしれませんね。」 ーー選手をスカウトするとき、良いクラブハウスがあることは大きなアピールポイントとなるのでしょうか。 平瀬「なります。クラブハウスはそのクラブの顔というべき場所です。顔というからには、例えば外部の人がクラブハウスを訪れたときに『立派なクラブハウスだなぁ』『こんなすごいトレーニング施設が中にあるんだ』『食堂のご飯が美味しいなぁ』、そして『トップの選手の使う場所はすごいな』と感動してもらう場所がクラブハウスであるべきだと、私は思います。 そうした場所にクラブのエンブレムを堂々と掲げることで、多くの人の目標や憧れになることが、プロのサッカークラブの役割の一つであると思うんです。 クラブハウスをはじめとする環境をよりよく整えることで、ベガルタ仙台でプレーしたいと考える選手たちがきっと増えることでしょう。そうした意味で、クラブハウスはスカウトの時の大きな武器になると言えますね。」 さまざまなチームでプレーしていた平瀬氏は、多くのチームのクラブハウスを使用している。その経験から生まれた言葉が、クラブハウスはクラブの顔という一言であろう。 憧れの場所となることが、次の世代を育てることにつながる。 べガルタ仙台の未来への種まきは、すでに始まっている。 *1)本名はアルトゥール・アントゥネス・コインブラ 。ジーコは愛称。ブラジルのCRフラミンゴやイタリアのウディネーゼでプレーした後、1991年から1994年まで鹿島アントラーズでプレー。2002年から2006年までは日本代表チームの監督に就任。2018年から2021年まで鹿島アントラーズのテクニカル・ディレクターに就任。 *2)1964年創立の全日空横浜サッカークラブが前身となり、1993年に横浜フリューゲルスとしてJリーグに参入。横浜マリノスと合併する形で消滅するも、1991年の元旦に開催された天皇杯決勝で清水エスパルスを下し優勝した。 (文 對馬由佳理)(インタビュー・写真提供 ベガルタ仙台) 注釈 この記事は、ベガルタ仙台オフィシャルウェブマガジン SOCIO MAGAZINEによるインタビュー記事を再編集したものです。