変えないために変える 一周回って考えるクラブの進化/ギアを愉しむ。
四半世紀に及ぶトライ&エラーを経て、令和時代ではアドレスでムムッとなるような三角や四角形のドライバーヘッドを、ほとんど見かけなくなった。拍子木を叩いたようなサウンドがするモデルもない。各ブランドが変えてはならないところをしっかりと押さえたうえで、見えないところで弾道パフォーマンスの改善に努めている証拠といえる。 我々プレーヤー側も、新製品や気になるモデルを試打する際に最新のテクノロジーばかりに目を向けず、構えやすさや振ったときの心地よさ、打った時の手応え、音などに大きな違和感がないかをチェックすることを優先するべきなのかもしれない。そのうえで飛距離や方向性などの弾道パフォーマンスの変化、改善に着目するようにしたいものだ。
「変えないために変える」――そんな進化もある
開発拠点を取材するなかで、今でも心に残っている開発者の言葉がある。「フィーリングをキープするために、フェースインサートを変えました」というオデッセイパターのエンジニアの言葉だ。 当時のオデッセイではホワイトホットXG、ixなど、初代ホワイトホットに代わる新インサートの開発に余念がなかった。「なぜ新しいフェースインサートを開発した?」という私の質問に対し、「より転がりが良くなる」「打点のバラツキに強くなる」など、打球結果の改善のためという返事が返ってくると勝手に予想していた。が、彼の言葉は違った。 「初代ホワイトホットのフィーリングをキープするためです。ボール開発チームとミーティングし、ニューボールのフィーリングが変わってしまうと分かった時点で、パターのインサートを変えていかないと従来のフィーリングが保てないと思ったからです」 2000年に発売され、今なお多くのゴルファーから支持を得ている初代ホワイトホット。「変えないために変える」、そんな進化もあるのかと妙に感激したことを覚えている。(高梨祥明)