河合優実や仲野太賀の母親役で壮絶演技の坂井真紀…舞台で見せた七変化カメレオン女優の凄み
昨年NHKのBSプレミアムで放送され、ギャラクシー賞など高い評価を受けた河合優美主演ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』が現在NHK総合で放送されており、半身不随の母親役、坂井真紀の演技が話題となっている。 【売れっ子俳優の2人】すごい!手を繋いで歩く仲野太賀と森川葵の"実力派"カップル 4月期に放送されたドラマ『季節のない街』(テレビ東京系)でも、仲野太賀演じる息子を溺愛する母親役を演じ、「リアルでちょっと怖い母親」としてピカイチの輝きを見せている。 『リハウスガール』といえばすぐ頭に浮かぶのが宮沢りえだが、実は坂井が4代目リハウスガールだったことはあまり知られていない。今から34年前、1990年のことだ。当時、坂井はまだ短大生だった。 それから2年後にドラマで俳優デビューしてからこれまでに80本以上のドラマ、50本以上の映画に出演している。ドラマでも映画でも現代劇から時代劇までシリアスな役からコミカルな役まで演じることができ、演技の幅の広さは折り紙付きだ。 そんな坂井が鬼才ケラリーノ・サンドロヴィッチ演出、劇団『ナイロン100°C』が主催する舞台『江戸時代の思い出』に出演するというので、さっそく観に行った。 ◆舞台上の三役で見せた全く異なるキャラとギャグ 詳しい内容は割愛するが、結論から言うとなんと表現したらいいかわからない、頭が混乱するような舞台だった。最後の最後に伏線がすべて回収されるのだが、そこまでは「?」が続く。とにかくナンセンスギャグで溢れていて、一つ一つの台詞がすべてギャグ、まるでコントの連続という腹がよじれるどころか、観ていて呼吸困難になりそうな、まさに“抱腹絶倒”の舞台だった。 三宅弘城、みのすけ、峯村リエ、大倉孝二などドラマでお馴染みの芸達者な役者が顔を揃え、彼らが大真面目にギャグを繰り出す姿に込み上げる笑いは底知らずだった。坂井も負けず劣らずの演技で笑いを取っていたのだが、彼女は他の役者と大きく違っていた。それは……。 実はこの舞台はオムニバスの形をとっており、役者によっては一人で何役も演じていた。坂井もミュージカル女優、顔が臀部という“尻侍”の姉、疫病に罹った江戸時代の村娘の三役を演じていた。他の役者は役が変わっても、同じ役者だとすぐにわかるのだが、坂井は全くわからなかったのだ。私の目に問題があったのかもしれないが、大爆笑をさらう冒頭のミュージカル女優役が坂井とは気づかず、その後も坂井はどこにいるのか……と探し続けたほど。 笑いの中にすこしだけホロリとするシーンもある侍の姉を演じた時もわからず、ちょっとサイコパスなキャラもある村娘の時にやっと気がついたが、カーテンコールでまたミュージカル女優の姿に戻っていたので「坂井はなぜいない?」と思ったほどだった。演じるキャラが違いすぎたというのもあるが、まさに“カメレオン女優”、坂井の演技力の高さを実感した次第だ。 今でこそ、演技派や性格俳優などといわれる坂井だが、実は昔から笑いに関してもお笑い芸人を凌ぐほどのセンスの持ち主といわれていた。 「’01年からフジテレビ系列で放送されていた伝説のバラエティ番組『ココリコミラクルタイプ』に番組開始からレギュラーとして参加。番組ではさまざまなキャラクターやシチュエーションをテーマにコントが繰り広げられ、ココリコが司会進行役となってゲストや他のレギュラーメンバーとのトークセッションを繰り広げていました。 坂井さんは『血液型判断女』『裏切る女』『いき過ぎ口ハス女』『負け犬の女』『笑いに厳しい女』などさまざまなキャラクターを演じ、松下由樹さん、小西真奈美さんと並び同番組には欠かせない看板女優となりました」(バラエティ番組構成作家) そこからさらに新境地を開いたのが、’08年の主演映画『ノン子36歳(家事手伝い)』だった。 「離婚して実家に戻り、特に仕事もせずに暮らしている元芸能人の役でした。この映画で初めてフルヌードのラブシーンを演じ、星野源や鶴見辰吾との絡みが話題になりました。彼女の演技が認められ、映画誌『映画芸術』の’08年度日本映画ベストテンで1位に輝くなど高い評価を得ています」(映画記者) その他にも、映画『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』の演技で第18回日本映画批評家大賞助演女優賞を受賞しており、押しも押されもしない“演技派”に。 私生活では’09年、10歳年下のカメラマンと結婚。41歳で女児を出産した。しかし、今度は夫の不倫が報じられ、’20年夏に離婚を発表している。子どもの親権は坂井が持つことになったが、手がかからない年齢となったこともありこれまで以上に精力的に活動している。 今年はドラマのほかにすでに公開された作品も含め、4本の映画に出演、その勢いは止まることがないようだ。
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