広島市内の路面電車とバス、均一運賃値上げの理由は? 要因は複合的…各社は理解求める
広島市内の路線バスと路面電車の均一運賃の引き上げには、複合的な要因が絡む。燃料費や物価高騰への対応に加え、人材確保のための人件費アップ、車両の更新など、経営課題は各社に共通する。乗客数も新型コロナウイルス禍前の水準に戻っていない。10月22日にあった市地域公共交通活性化協議会では、各社の担当者が路線の維持に向け、値上げに理解を求めた。 運賃が拡大するエリアの地図 「直面する課題に早急に対応する必要があり、やむを得ず運賃改定を行う。持続可能な公共交通体系の構築につなげる」。広島電鉄(中区)の梶山雅弘交通政策部長は、関係する7社を代表して値上げの目的を説明した。 出席した各社が最大の課題に挙げたのが乗務員の確保だ。広島バス(同)の平岡祐介運輸部次長は「待遇改善の原資を確保できなければ、路線を維持できない」。広電子会社のエイチ・ディー西広島(西区)の砂古智之常務は「広電からドライバーを借りて運行している」と説明する。 乗客数はコロナ禍から復調基調にあるものの、JRバス中国(西区)の渡瀬千博運輸課主席は「コロナ前から赤字の路線も多い」と苦境を打ち明ける。 均一運賃エリアはやや広がるが、利用者の負担は増す。通院や買い物で路面電車とバスに週3回ほど乗る西区の女性(82)は「燃料代も上がっており、運賃の引き上げは仕方ない」と受け止める。一方、西区の40代のパート女性は「中学生の息子が通学で路面電車を使う。値上げは家計に痛い」とこぼす。 現行の均一運賃220円から240円への引き上げは来年2月1日を目指し、2028年3月末まで維持する予定だ。協議会の委員からは、均一エリアの設定以外にも、利用者の増加につながる柔軟な運賃制度の設計を求める意見が出た。広電の梶山部長は取材に「まずは市中心部の公共交通網を維持する枠組みを整えたい。その上で戦略的な料金も検討する」と話した。
中国新聞社