LGBTQ当事者が届ける希望の種、居場所づくり、出張授業 「大丈夫、一人じゃない」【地域再生大賞・受賞団体の今】
自分の性の在り方に悩む子どもたちが安心して過ごせる居場所づくりに、広島市在住のLGBTQ当事者2人が取り組んでいる。活動開始から7年近く。本人や保護者、サポーターが交流する会を70回以上開いた。性の多様性を伝えようと、学校や企業などに出向く出張授業や講演・研修は計400回以上に及ぶ。 【写真】「おとこおんな」幼児がいじめを受けたとき 防止法は対象外、LGBTどう教える
心を閉ざし、孤独を感じた子ども時代の経験から、かつての自分たちと同じように苦しむ子に「大丈夫、一人じゃない」と寄り添い続ける。「自分を大切にして、自分だけの花を咲かせてほしい」と願う。(共同通信=藤田康文) ▽思い思いの色 「今日は自分が本当に好きな色を見つけてもらいます」。思い思いの色の鉛筆を手に取り、かばんの塗り絵に取り組む小2の児童たち。「ここいろhiroshima」が2024年9月、広島県府中町の府中北小で行った出張授業だ。 共同代表の高畑桜さん(32)は「生まれたときは女の子。心の中は男の子と女の子が半分ぐらい」、當山敦己さん(33)は「女の子として生まれたけど、今は男の人として生きてます」と自己紹介した。 黒板に全員の作品を並べ、真ん中に高畑さんは「ひとりひとりがたからもの」、當山さんは「じぶんとともだちのすきをたいせつにする」と書いた。児童の一人は「みんなが好きな色が分かって、うれしかった」と話した。
▽受け入れられた 5年生の授業で「性別はグラデーション(連続的で境目がないこと)。あっちは全部男性、反対は全部女性って区切るのは難しい」と伝え、2人は自らの生い立ちを話し始めた。 最初は高畑さん。「子どもの頃、女の子が好きな自分のことを周りに言えなかった」「なりたかった小学校の先生になったけれど、忙しくて、しんどくて心の病気で学校に行けなくなった。そんな時に両親に初めて本当の気持ちを伝え、ぎゅーっと抱き締めてもらった。『そのままの自分でいい』と前向きになれた」 続いて當山さん。「小学校の卒業直前に生理が来て、強烈なショックと嫌悪感があった」「大学時代、自分がトランスジェンダーであることを、信頼する先輩に打ち明けた。『違いは魅力』と丸ごと受け入れてもらい、めちゃくちゃ安心した」 2人とも子どもの頃、ある事情から自分の家庭内のことでも悩んでいた。當山さんは25歳の時に戸籍上の性別を男性に変え、その後生まれ育った沖縄から広島に移った。こうしたことも含め率直に語った。児童は真剣に聞き入っていた。 ▽ともに過ごす