バイデン大統領、不法移民50万人を救済へ 米国民の結婚相手など対象
アメリカのジョー・バイデン大統領は18日、米国民と結婚している不法滞在者数十万人を強制送還から保護する新たな政策を発表した。 移民問題は、11月の大統領選挙を前に多くの有権者にとって最大の関心事になっていると同時に、バイデン氏にとっては頭痛の種となっている。同氏は最近、メキシコからの記録的な人数の移民流入の抑制を目的に、包括的な大統領令を出した。 新たな政策は、10年以上アメリカに滞在している移民に適用し、国内で合法的に働けるようにする。政府は50万人以上が対象となり、対象者の21歳未満の子ども5万人も恩恵を受けるとしている。 バイデン氏は発表にあたり、移民や結婚したカップル、そしてすべての米国民にとって、移民制度をいくらか「不公平」、「不公正」でなくするものだと述べた。 また、新政策は「この夏」実施すると説明。野党・共和党を念頭に、「他のチームが何と言おうと、米国民に圧倒的に支持されている」とした。 アメリカで不法滞在している移民にとっては、2012年に当時のバラク・オバマ政権が打ち出した、子ども時代に親に連れられて来た不法移民を保護する「若年移民に対する国外強制退去の延期措置(DACA)」以来の重大な救済制度となる。DACAでは「ドリーマー」と呼ばれる若者約53万人が強制送還から守られた。 新たな政策の対象者は今後3年間、永住権を申請でき、3年間の労働許可を得られる。永住権を申請すると「その場で仮放免」され、身分が変更される間、アメリカにとどまることが認められる。 政府は、対象者の大半はメキシコ出身で、不法滞在の平均期間は23年ほどとみている。 政府はまた、米大学で学位を取得したり、米企業から誘いを受けたりした高度な技術をもつ不法移民についても、ビザ(査証)取得の簡素化とスピードアップを図るとしている。 ■規制強化訴える団体は反発 移民規制の強化を訴える団体「ナンバーズUSA」は、新政策を「非良心的」と非難する声明を発表。「バイデン大統領は、史上最悪の国境危機を食い止めるどころか、違憲の措置のために大統領権限を使った。これは有権者と議員を回避する策であり、アメリカへの不法入国者は恩赦を得られるというメッセージを送るものだ」とした。 移民問題を扱う弁護士で、米ケース・ウエスタン・リザーヴ大学の教授でもあるアレックス・キューイック氏は、今回の措置は「狭いグループ」に影響を与えるものだが、資格がありながら身分を正常化するのに複雑な問題に直面してきた多くの移民たちにとっても「出発点」になると説明。これまで永住権の申請にはいったん出国する必要があったが、「家族を引き離す必要がなくなる」と述べた。 バイデン氏は今月4日、不法入国した移民を当局が亡命申請を処理せずに迅速に立ち退かせられるようにする大統領令を出した。 移民問題に取り組む団体「米国移民評議会」の政策ディレクター、アーロン・ライクリン=メルニック氏は、この措置と今回の新たな政策は「互いにまったく交わらない」ものではあるが、新政策はバイデン政権にとって「前向きな見出しを得る」のに役立つかもしれないと述べた。 同氏はまた、「バイデン政権は、複雑な移民制度から長期間抜け出せないでいる不法移民がたくさんいるのに、新たな入国者ばかり焦点を当てていると非難されている」、「ここ数週間の大統領の行動は、それら両方の懸念に対処するものだと思う」と話した。 (英語記事 Biden to give legal status to 500,000 undocumented spouses)
(c) BBC News