【社説】退任控えた岸田首相の「手ぶら訪問」、国民の同意のない外交は持続可能でない
退任間近の岸田文雄首相が6日、ソウルを訪問し、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領と12回目の首脳会談を行った。尹大統領は「屈辱外交」という批判を受けながらも様々な譲歩措置を取ったが、空のコップの「残り半分」を満たす誠意ある呼応措置は今回も見られなかった。自民党の「穏健派」を代表する岸田首相は就任直後、「前向きな歴史認識」を明らかにしており、韓日関係に新鮮な活力を吹き込むと期待する人も多かった。しかし、結局虚しい結論に至った。韓国政府は長期的に日本とどのような関係を築いていくのかについて根本的に考え直さなければならない。 両首脳は同日午後に開かれた会談で、来年の国交正常化60周年を控え、両国の交流と協力を持続的に強化していくことの重要性について意見を共にした。さらに在外国民保護協力覚書を交わし、第三国で両国国民の安全を守る制度的基盤を作った。また、両国国民がより便利に相手国を行き来できるよう出入国の簡素化のような人的交流増進方案を積極的に模索することにした。意味のある成果だが、韓国の期待に添えるレベルではなかった。その後、尹大統領夫妻は岸田首相夫妻と夕食を共にした。 両国の間に特別な懸案がないのに、退任を控えた日本首相が韓国を訪れるのは極めて異例のことだ。一部で、韓国国民の税金で岸田首相の退任パーティーを開くのかという声があがっているのもそのためだ。岸田首相は自民党を大きな危機に陥れた党内の「政治資金」問題をうまく解決できず、27日に行われる総裁選への出馬を断念せざるを得なかった。このような苦しい政治状況の中で、自身が韓日関係を劇的に改善する成果を上げたことを誇示したかったようだ。 韓日関係が紆余曲折を経ても発展できたのは、日本が過去の歴史問題について謝罪・反省した村山談話(1995)と韓日パートナーシップ宣言(1998)の精神を堅持してきたためだ。岸田首相の虚しい退任からも分かるように、日本にはこれ以上、反省の歴史認識を期待することが難しい時代になってしまった。 日本と尹錫悦政権はこれまで「歴史問題には目をつぶり軍事協力さえ進めれば良い」という姿勢で両国関係を改善してきた。しかし、韓国国民の支持を得られないこのようなアプローチを今後も続けることはできない。韓国政府は韓日国交正常化60周年を迎え、両国の戦略観を一致させる「新韓日共同宣言」を進めているという。政府は無理な「速度戦」をあきらめ、持続可能な両国関係を考えなければならない。国民の同意を得られない外交とは、砂上の楼閣にすぎない。 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )