イスラム国をどう見るか? イスラム差別から掃討作戦まで 黒木英充、高橋和夫、萱野稔人らが議論(4)
THE PAGE
THE PAGEが放送したTHE PAGE 生トーク「中東とどう向き合うか~イスラム国から日本外交まで~」。出演は、黒木英充・東京外国語大学教授、鈴木恵美・早稲田大学イスラーム地域研究機構招聘研究員、高橋和夫・放送大学教授。司会・進行は、萱野稔人・津田塾大学教授、春香クリスティーンさん。 以下、議論の第4部「イスラム国とは何か」を議論した部分の書き起こしをお届けします(第3部はこちら)。 ※討論の動画は本ページ内の動画プレイヤーでご覧頂けます。
シャルリーエブド事件から見えるもの
(以下、書き起こし) 春香クリスティーン:はい。続いてのテーマはイスラム国、いよいよ来ましたね。 萱野稔人:そうなんですよ。イスラム国、もう本当に日本人人質事件以降、日本でもものすごく注目されてますけども。 春香クリスティーン:毎日のように聞きますよね、ニュースでも。 萱野:そうですね。で、それがまたホームグロウン、なんですか、テロリスト。飛び火をしてるわけですね、アメリカやカナダや、それからヨーロッパ。そこで要するにイスラム国の影響を受けた人たちが、単独でテロを起こそうというような形が広がってて、で、フランスでもシャルリーエブド事件っていうのが少し前にありましたよね。で、黒木さん、あのシャルリーエブドの事件が起きた日、まさに現場近くを散歩してたらしいじゃないですか。 黒木英充:いやいや、本屋さんに行ってたんですけれども。ちょうどあの時間帯、何が起こってるかまったく分かりませんでしたけれども、音も聞こえませんでしたし、2キロほど離れてたましたんで。 萱野:現場から2キロのところを歩いていた。 黒木:ええ。脇を救急車がわっとものすごい勢いで走っていったんですけどね。で、そのあと何があったのかっていうのが、ホテルに戻ってインターネットを開けたら分かったっていうような、そういう次第だったんですが。あの事件を見たとき、イスラム国とのつながりっていうのはあとから言われましたけれども、私はちょっとイスラム国からちょっと離れるかもしれないんですが、関連するあれで言いますと、なんかデジャヴっていうか、既視感があって、それは、風刺画って言うんですけれども、あれ、それで私も関心持っていろいろ検索して、どんな絵を描いてたんだろうって見てみたんですけれども、あれはいわばヨーロッパ社会が(に見られた、ある種の)反ユダヤ主義で、ユダヤ人に対する風刺画と言いましょうか、ヘイトカリカチュアですね。 萱野:侮蔑とか、侮辱とかってことも込められた風刺ですよね。 黒木:ずっとそういうことやってきた、風刺ですね。そういう数世紀間にわたって実は描いてきてるわけですね。それが今まではユダヤ教徒、ユダヤ人に対して行っていたものを今度はイスラム教徒に関してやってるというような感じで私は受け止めたんですね。 萱野:なるほど。 黒木:ですから、そういうこともあって、イスラム国のメッセージっていうのが、いろんな世界中のイスラム教徒の世界中と言いますけれども、でも、数としてはほんの一部ですけれども、しかし、あちこちの人たちに一定のメッセージが届きやすい状況になってるっていうことはありますね。 萱野:なるほど。じゃあ、シャルリーエブドの事件のあとにフランスで表現の自由を守れっていってものすごく大きなデモが行われましたけれども、むしろ、あの風刺画はヘイトスピーチの問題として。 黒木:そうです。私はそうだと思いますね。 萱野:表現の自由だっていうよりは、むしろヘイトスピーチの問題として議論されたほうが良かったんじゃないかという考えで。 黒木:私はそう思います。はい。で、それを言論の自由というふうに持って行きたがる、そこが問題ですよね。