農業の「成長戦略」、実現性は?/木暮太一のやさしいニュース解説
先日、安倍総理大臣は、農業分野の「成長戦略」を打ち出しました。 具体的には、 ・農林水産物の輸出を2020年までに倍増させる ・農業・農村の所得を今後10年間で倍増させる(3兆円から6兆円に) です。 ―――「おぉ! すごい!」 非常に「前向き」な方針ですが、重要なのはその実現性ですね。本当に輸出を倍増させることができるのか? 本当に農業従事者の所得を倍増させられるのか? がポイントになります。
TPP反対派への配慮
―――「というか、そもそも、なぜこのような方針を打ち出したの?」 その理由は、まず「TPP反対派への配慮」があります。 自民党政権は、TPPへの参加を進めています。しかし、TPPでは農業も自由化される予定で、農業分野から強い反発があります。現在、農作物には高い関税がかけられ、安い輸入農作物も国内では値段が高くなるよう設定されています。 たとえば日本がアメリカから農作物を輸入する場合、牛肉には38.5%、オレンジには16─32%、プロセスチーズには40%の関税がかけられています。また米は778%の関税がかけられています。 ―――「関税778%??」 たとえば外国で100円で買えるとします。でも日本にはそれに778円の税金が上乗せられますね。 5%の関税で、100円の商品に5円の関税が上乗せられて「105円」になります。 100%の関税で、100円が200円に 778%の関税で、100円が878円になりますね。 TPP加盟によって、関税が撤廃されれば、日本の農家は自由競争にさらされてしまいます。かなり厳しい状況に置かれるのは確かでしょう。そのため、多く農業関係者は不安を感じています。その不安に対しての「成長戦略」です。 この成長戦略では、昨年2012年に4500億円程度だった農産物や食品の輸出額を、7年後の2020年までに1兆円に倍増させるとしています。 ―――「なるほど、それだったら安心!」 そうは言い切れません。目標を打ち出すのは簡単ですが、現実的に可能なのでしょうか? 日本の農業は、ずっと「競争力がない」と言われていました。そのため、高い関税で守ってきたのです。しかし、輸出を伸ばすということは、世界との競争に勝って、選んでもらうということです。これは「そうしたい!」と言って達成できるものではありません。