ナショジオが掲載したベスト動物写真2024、動物たちの魅力伝える傑作を厳選
アマゾンカワイルカから深海のホウライエソ、タテゴトアザラシの赤ちゃんまで今年のベストショット集
フォトジャーナリストのヤスパー・ドゥースト氏が撮影した写真には、ルーマニアの森で、ヒグマの母子がくつろいでいる様子が写っている。一見すると可愛らしさを感じさせるが、背後には複雑な事情が隠れている。 ギャラリー:ナショジオが掲載したベスト動物写真2024 18点 後ろ脚を失った母グマは狩りができず、通りかかる車から餌をもらおうとする。その結果、この家族は危険なほど道路に近づいてしまうのだ。 『ナショナル ジオグラフィック』2024年11月号の特集「野生を取り戻すヨーロッパ」のために、ドゥースト氏は当初、人と野生動物が共生する姿を捉えたいと、森の中での撮影を計画していた。しかし、道路脇で食べ物をねだるクマの集団に遭遇し、急きょ取材のテーマを変更した。 結果としてすばらしい写真が撮れたが、同時にその写真は、人とクマとの接近遭遇が、ルーマニアやそれ以外の国々で野生を回復させて守っていこうとする自然保護活動家にとって、大きな障害になっていることを浮き彫りにした。 この写真をはじめ、2024年のべスト動物写真を選んだ写真編集長のアレクサ・キーフは、写真家たちがベストショットを撮るためにかけた時間と献身の大きさに何度も感銘を受けた。 例えば、マイケル・フォースバーグ氏が、米ネブラスカ州の湿地で夜を明かすアメリカシロヅルを撮影した写真について、「フォースバーグ氏は何時間も、時には何日も、撮影の瞬間を待ちながら隠れる場所で観察を続けました」と、キーフは指摘する。 同様に、2024年10月のまるごと一冊「アマゾン」号のすべての特集を制作するために、ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラーであるトマス・ペシャック氏は、396日もの時間をアマゾンで費やし、水生生態系の壮大さを撮影した。 ジェニファー・ヘイズ氏のタテゴトアザラシや、アケーシャ・ジョンソン氏のヒグマなど、エントリーした写真の多くは何年もの膨大な積み重ねがあってこその作品だ。 季節が移り変わり、北半球が冬に向かう中、それぞれの写真はちょっとした暖かさと驚きを感じさせてくれる。そして、いかに多くの野生動物が生きていて、それらを守るためにさまざまな活動が行われていることを思い出させてくれる。
文=Jason Bittel/訳=杉元拓斗