なぜ定年を控えたおじさんは歩き出すのか?
57歳の春、中山道を歩くことにした
さて私も57歳の春に、中山道を歩き始めました。 中山道はご存知の通り、江戸五街道のうちのひとつです。 京都の三条大橋から江戸の日本橋を続く、約550キロのロングトレイル。比較的平坦な海沿いの東海道よりも、山がちな街道で、風景も変化があり情趣に富んでいます。 もちろん一気に歩き通すなんてことはしていません。 一日の行程を終えたら、東京の自宅に戻り、また気が向いたら、前回の終点から歩き始めるというのを繰り返して、5年かけて完歩しました。 牛のようにのろい。 旅先ですれ違う人のなかには、石畳の道を飛ぶように走り去る人もいますが、たぶん友達になれません。
「そうだ、街道歩きをしよう!」
歩き出しの朝は、寝覚めるときに天啓のように、街道歩きをしよう、とひらめきました。 東海道にするか中山道にするか、始点である東京・日本橋に着くまで決めませんでした。 地下鉄から地上に出て、「五街道の碑」の前に来て、ようやく中山道に決めたのです。 東海道は海沿いで、どうも工場地帯を延々と行くイメージがしました。 一方、中山道は木漏れ日の山道をのんびり歩く自分の姿を想像できました。 日本には五街道だけでなく、あちこちに「街道」というロング・トレイルがあります。 旧街道はクルマの往来が少なく、山村に行けば昔ながらの風景が残っています。 歩きたいと思ったら、まずは街道歩きをおすすめします。 あっ、言い忘れるところだった! 絶対にひとりで行くこと。ぞろぞろと引率者に連れられて歩いても風景は開いてくれませんよ。 宮川 勉 水彩画家・文筆家 元BE-PAL編集部員。ライターときどき画伯(笑)。なんちゃって虫屋。中山道を歩いた記録として『中山道のリアル~エッセイのある水彩画集~』(私家本)がある。アマゾンの電子書籍で販売しています!
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