受刑者にも“おせち料理”は出される? “日本最大の刑務所”「お正月」の過ごし方
正月、一般社会から隔離された刑事施設において、被収容者たちはどのように過ごしているのだろうか。 日本最大、収容者1700人「府中刑務所」 堀江貴文氏ら出所した著名人の話や、刑務所関連の書籍からは「おせちや雑煮が出る」といった話も聞こえる。実情について、刑務所としては日本最大である府中刑務所(2024年10月現在1685人を収容。矯正統計より)に聞いた。
正月に配食される「特別菜」とは
府中刑務所の担当者は「具体的にどのようなメニューを出しているのかについては、施設によって事情が異なるので答えられない」とした上で、一般的な正月の食事について教えてくれた。 「たしかに、正月に『特別菜』と呼ばれるものは出しています。ただし、よく勘違いされますが、正月用の食費が特別に支給されているわけではありません。あくまで年間予算の中から、施設ごとに日々の食費をやりくりして用意しています」 法務省公表の「令和6年版犯罪白書」には、被収容者の給養について〈食事及び飲料(湯茶等)が支給される。令和6年度の20歳以上の受刑者一人一日当たりの食費(予算額)は543.21円(主食費97.09円、副食費446.12円)である〉と記載されている。 いくら特別菜といえど、おおよそここから外れない程度の予算でまかなっているということだろう。前出の担当者も次のように話す。 「府中刑務所でも、みなさんがイメージするような豪勢なものを出しているわけではありません。日々の生活へのメリハリや、情操教育の一環といった意味合いで、管理栄養士とともに予算を考慮しながら、新年を迎えたと感じられるものを用意しています」
刑務所も高齢化、餅は「のどに詰まらせる危険」
前述のように個別具体的なメニューについて公表することはできないが、一般的な例として、普段は白米7:麦3のごはんが白米100%の「銀シャリ」になったり、餅を出したりすることがあるという。 「餅については、被収容者の高齢化が進んできていることもあり、のどに詰まらせる危険を避けるため白玉にする施設や、餅類自体を出さない施設も多くなってきています。 そうした施設では、被収容者から『餅を食べたい』という声もありますが、不平等が生じる、配食や食事の時間に限りがあるといった運用上の問題などから、一部の人だけに出すのは難しいのが現状です」 なお、前出の犯罪白書を参照すると、ここ20年、入所受刑者総数に占める高齢者の比率(高齢者率)は右肩上がりに上昇を続けている。 令和5年(2023)の高齢入所受刑者数は2009人。平成16年(2004)と比べて約1.5倍になっており、70歳以上に絞れば同年比約2.6倍となっている。これに対して、他の年齢層の多くが減少傾向にあることも、高齢者率の上昇に拍車をかけているといえるだろう。