2025年大阪万博に「みゃくみゃく」と受け継がれる昭和の亡霊とは? 世界の万博跡地を歩いた古市憲寿が解説!
みゃくみゃくと受け継がれる昭和の亡霊
大阪の夢洲に近い事例には、セビリア万博のカルトゥハ島や、モントリオール万博のノートルダム島がある。ノートルダム島には、遊園地やカジノ施設もあり、一定の賑わいを見せているが、ラスベガスやシンガポールのような派手さは一切ない(注9)。 夢洲は決してアクセスのいい場所ではない。2025年には大阪メトロ中央線が夢洲まで延伸されるが、大阪駅からは約25分かかる。車でも中心部から約30分、渋滞時にはさらにかかるだろう。街中ならまだしも、「その先」がない人工島である。そんな辺鄙な場所に人が集まり続ける様子はにわかには想像できない。 特に大阪府では2010年から人口減少が始まっている。887万人いた人口は、2050(昭125)年には700万人、2060(昭135)年には600万人を切ると予測されている(注10)。人口が減っていく街に必要なのは、さらなるインフラ整備ではなく、削減と集約化のはずだ。 どちらにせよ1990年代以降の万博で、レガシーを意識せずに「聖なる一回性」などと寝言を言っている万博は存在しない。オリンピックでさえ2003(昭78)年からは憲章に「レガシー」という言葉が登場している。 果たして2025年の大阪万博は、万博ならではのレガシーを夢洲に残せるのだろうか。それとも「聖なる一回性」の万博で終わるのか。脈々と堺屋太一の思想だけが受け継がれていないか心配になる。ミャクミャクに昭和の亡霊が宿っていないことを祈る。 (注9) カジノへのアクセスは自動車に限られ、公共交通機関はバスのみとなる。路線番号は「777」。 (注10) 大阪府「大阪府人口ビジョン」2016年。
古市 憲寿(社会学者)