BMW「M3」とメルセデス「190」を抑えてDTMタイトルを獲得! アウディ「V8クワトロ DTM」が約1億1000万円から販売中です
伝説の巨大DTMマシン、国際オークションに現わる
2024年5月10日から11日に、地中海に面した見本市会場「グリマルディ・フォーラム」を舞台として開催されたRMサザビーズ「MONACO」オークションでは、かつてDTM選手権で実際に戦ったアウディ「V8クワトロ」が出品されたというニュースが大きな話題となりました。 【画像】1991年仕様にレストア! アウディ「V8クワトロ DTM」を見る(全48枚)
4輪駆動の実力をサーキットでも証明したビッグサルーン
1984年に「ドイツ市販車選手権(Deutsche Produktionswagen Meisterschaft)」として設立、1986年に「ドイツ・ツーリングカー選手権(Deutsche Tourenwagen Meisterchaft)」という名称に移行したDTMは、ヨーロッパ大陸でもっとも権威のあるツーリングカー選手権として急速に頭角を現した。 グループAのレギュレーションが厳格に施行され、パフォーマンスベースのウェイトハンディキャップシステムにより、比較的公平な競争の場が促進されたことから、DTMはどんどん人気を高めてゆく。 1ラウンド2戦、ダブルヘッダーの「レースウィークエンド」形式が導入された1988年シーズンには、メルセデス・ベンツとBMW(2.5L以下のディヴィジョン2)、フォード(2.5L以上のディヴィジョン1)など、自動車メーカーの関心も高まっていた。 さらに1989年は「ヨーロッパ・ツーリングカー選手権(ETC)」が崩壊したこともあり、元F1パイロットのジョニー・チェコットやベルント・シュナイダー、ツーリングカー界の巨匠スティーブ・ソーパーやロベルト・ラヴァーリア、スポーツカー耐久レースのレジェンドであるクラウス・ルートヴィヒやマヌエル・ロイターといったスタードライバーが、続々とDTMへと活躍の場を移した。 フォード「シエラ」が撤退したのち、1990年シーズンからはBMW「M3」とメルセデス・ベンツ「190E 2.5-16」からなる2大巨頭の直接対決となり、両ブランドはワークスが支援する4チーム以上の体制で乗り込んできた。 ところがこのシーズンにもっとも注目を集めたのは、これまでラリーに集中していたアウディが、あまりレース向きとは思えない大柄な4ドアセダン「V8クワトロ」を擁して、ワークス唯一の排気量無制限となる「ディヴィジョン1」に初めて公式に進出を果たしたこと。しかも「シュミット・モータースポーツ」が運営する、ファクトリーサポートのV8クワトロ1台のみの体制としたことも、大いに注目されることになる。 しかし、元スポーツカー世界王者のハンス-ヨアヒム・シュトゥックが操縦したクワトロV8は、その優れた4輪駆動システムがサーキットでも有用であることを証明する。シュトゥックは22レース中7レースで勝利し、初のDTMタイトルを獲得したのだ。 そして翌1991年シーズン、シュミット・モータースポーツは2台体制に拡大し、22歳のカートの天才ヒューバート・ハウプトがシュトゥックに加わる。さらにワークスが支援する第2のチーム、フランク・ビエラとイェリンスキーのためにV8クワトロを用意した「アウディ・ツェントルム・ロイトリンゲン」チームの参戦によって、アウディの存在感はさらに高められることになる。 「エヴォリューション」仕様にアップデートされたV8クワトロの3.5Lエンジンは、約500psを発生し、新しいフロントスプリッターと高さ調整可能なリアウイングは、空力面で大きな進歩をもたらした。 BMWは当初、シーズン序盤の4レースで勝利を収めてシーズンの主導権を握ったものの、終盤の4戦で3勝を挙げたビエラは、メルセデス・ベンツのルートヴィヒを抑えて1991年シーズンのDTMタイトルを獲得する。 信じられないことに、これはメーカーがDTMタイトルを連続して獲得した初めてのケース。アウディの優位性は、ビエラがシーズン終盤のITRレース4戦中2戦で優勝し、「ITRドライバーズカップ」を獲得したことでも明らかになった。
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