「自分はナンバーワンじゃない」北海道出身の“規格外候補生”、謙虚に「完璧」追い求めた養成所生活/未来の競輪スター候補
今年デビューする第125回生(男子)と第126回生(女子)の卒業式が8日、伊豆市の日本競輪選手養成所で行われた。その卒業式前日、忙しいスケジュールの合間を縫って4名の候補生たちが取材に応じてくれた。今回は125回生ナンバーワンの呼び声も高い“ザ・規格外候補生”中石湊のインタビューをお届けする。(取材・構成 netkeirin編集部)
「自分はナンバーワンじゃない」在所期間は“完璧”を求め続けた
ーー入所時と現時点を比べて、成長することができたポイントを教えてください。 中石 入所前は鉄フレームに乗る機会が少なかったですが、入所してからは鉄フレームに向き合う時間が多くなりました。その中で乗り方だったりレース展開の流れだったりを学べたので、競輪の基本というか「漢字の競輪」について経験を深められたと思っています。 ーー中石候補生はナショナルチームの強化指定選手ですが、ケイリンと競輪の競技性、機材に対する感覚をどのように捉えていますか? 中石 自転車への力の伝え方が違うので、ちょっと乗らなかっただけで感覚が狂ってしまうことがあります。 ーー卒業記念レースの前にはインド・ニューデリーでアジア選手権トラック2024に遠征しています。この行き来も難しかったのではないでしょうか? 中石 そうですね。感覚の違いに苦労しましたし、卒業記念レースもああなってしまって…。でも、そういうところに自分の弱さや未熟さがあるのだと勉強になりました。それでも入所前と比べれば、感覚の面ではかなり良くなっています。 ーー中石候補生はゴールデンキャップを獲得し、3回行われた記録会のタイムを分析してみても他の候補生に比べて突出した好タイムを持っています。「自分が1番」という感覚で過ごしていましたか? 中石 いいえ。たしかに距離別のタイムで自分が1番というものもありました。でも、すべて1番ではありませんでした。自分は完璧になりたいんですけど、完璧じゃないとわかっているので、『完璧』を求めて10か月間、誰にも負けない気持ちで練習しました。それに、自分よりも優れているポイントを持っている候補生にも出会いました。 ーー誰か名前を挙げられる候補生はいますか? 中石 例えば卒業記念レースを制した森田さんはタイムもいいですし、レースの組み立て、レース勘とかだってすごい。森田さんだけではなくて、ほかにも自分よりも優れたものを持っている候補生がたくさんいたので、完璧に近づくために、見たり聞いたりを繰り返しました。 ーー完璧を求めて候補生同士で切磋琢磨したのですね。 中石 はい。でもやっぱりお互いにライバル同士でもあります。知りたいことがあっても、自分のことをライバルに感じてくれて、聞きたいことを話してくれない候補生もいました。その時は目で見て盗むようにして、自分の弱いところを強化しました。 ーー特定の「ライバル」のような存在には出会いましたか? 中石 自分の場合はレースで先行してくる相手が全員ライバルと考えていました。「誰が来たってどんな展開だって叩いたる!」と思って走っています。レースでの主導権を絶対に譲りたくないので、競走で一緒になって先行する選手、主導権を獲り合う選手は全員ライバルでした。だから特定のライバルはいません。