『虎に翼』脚本・吉田恵里香に聞く。あらゆる立場の女性を描くこと、憲法第14条への思い 「寅子だけが正しいわけではない」
支える側が「二軍」のような扱いをされている気がして、腹が立つ。花江というキャラクター
―花江も寅子と同じように先を歩いてきた女性のひとりで、とても大事な存在だと思います。吉田さんが花江に託したものや、花江を描くうえで大事にしたことを教えてください。 吉田:花江はもうひとりの主人公だと思っています。朝ドラには「何かを成し遂げた男性の妻のヒロイン」という構図があると思うんですが、花江はそれになりえる存在で、花江の朝ドラがあってもおかしくないという気持ちで描きました。 花江は社会に出て働きたいという気持ちはなくて、家庭に入って家族を支えたり、家族のために生きたりすることに幸せを感じる人です。最初から最後まで一貫しているので、働きに出る描写はやめようと思っていました。彼女が働いてお金をもらったのは、戦後に縫い物の内職をしたときだけです。 言いすぎかもしれませんが、社会構造的に、誰かがバリバリ働くためには誰かケアする人がいなくてはいけない、という状況になってしまっています。その改善策が自分でもわからないんですが、つまり、ケアする人がいなかったらバリバリ働ける人がいないという二人三脚になっている。 そういう構造のなかで、なんとなく支える側が世の中で「二軍」のような扱いをされてしまっている気がして、すごく腹が立つなと思っています。家庭を支えて円満にするということがどれだけ大変で、大事か。ご飯があってシーツがピンとしていて埃がないとか、心地よい生活をつくることは、本当にその人の努力あってこそなので、花江はそういったことに対して熟練されていく存在にしました。 でも、花江が全部担うというか、「やらされる」状況になってしまうのは違う。それは家庭のことで、みんなで支え合うことだと思います。なので、猪爪家は途中からみんなで支え合う方向に変わっていったんですが、主戦力は花江です。だから(弟の直明の)同居の話も含めて、彼女を取り巻くものに対する彼女のいろいろな考えが見えてくるようにしたつもりです。実際にはありませんが、『虎に翼』花江編があったとしたら、ちゃんと成立するようにつくったつもりでした。