「東京メトロが新規上場」。わずか半年で公募割れした日本郵政と“様相が異なる”理由
中小企業コンサルタントの不破聡と申します。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、「有名企業の知られざる一面」を掘り下げてお伝えしていきます。 10月23日に東京地下鉄(東京メトロ)がプライム市場に新規上場します。市場から吸収する額は3200億円で、ソフトバンク以来の大型IPO。10月16日から申し込みを開始しました。その話題性から、SNSでは購入を希望する声も多く聞こえてきます。 しかし、鉄道事業を主軸とする東京メトロに十分な成長性があると言えるのでしょうか。
東京メトロが市場から調達する金額はゼロ?
東京メトロは政府が53.42%、東京都が46.58%の株式を保有しています。 「復興財源確保法(東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法)」では、政府が保有する東京メトロの株式の売却収入を、2027年までに復興債の償還に充当するとされており、株式上場に向けた準備を進めてきました。 株式を上場する際は、既存の株主が持株を売却する売出と、会社が新たに株式を発行して資金を調達する公募の2つがあります。多くの場合、この2つを組み合わせますが、東京メトロの上場は売出のみ。従って、東京メトロは新規上場によって資金を調達するわけではありません。政府と東京都が売却益を得ることが目的の一つとなるわけです。
日本郵政のパターンとは「やや様相が異なる」
なお、これは2015年11月の日本郵政の新規上場も同じでした。 民営化によるIPOと聞くと、日本郵政の負のイメージを持つ人が少なくありません。日本郵政の株価は上場からわずか半年ほどで公開価格を割り込んだのです。公開価格ベースの時価総額は7.3兆円でしたが、現在は4.4兆円ほど。PBRは0.4倍と冴えません。 日本郵政は2015年3月期から9期連続で減収となるなど、収益性に問題があります。これは、デジタル化が進んでハガキなどの郵便物の市場が縮小していたことに最大の要因があります。EC取引を背景とした小包においてもすでに競合がひしめているため、強化しようにもしきれません。また、郵便事業は人への依存度が高いため、効率化を進めづらいという問題点も抱えています。 しかし、ビジネスの伸びしろと経営効率という側面において、東京メトロは様相が異なります。