トラス危機再来を警戒、英長期金利が約16年ぶり高水準-ポンド売りも
(ブルームバーグ): 英国債と通貨ポンドなど英国資産の急落は、同国経済に新たな警告を発し、多くの問題に直面するスターマー労働党政権への圧力を高めた。
英国債利回りは過去数カ月でじわじわ上昇してきたが、長らく鬱積(うっせき)していたインフレと政府予算計画への懸念が市場を今週直撃し、不安が本格化した。
2022年のトラス保守党政権では、大型減税案などが財政不安を引き起こし、英国債とポンド相場の急落を招いた。今の状況と違いがあるとはいえ、英国債危機はなお記憶に新しく、英経済が抱える問題は未解決のままだ。
8日の債券市場では、英10年国債利回りが08年以来、30年国債利回りは1998年以来の高水準に達した。トランプ次期米政権の減税および関税政策を巡る懸念の高まりも利回り上昇に拍車を掛けた。
プレミア・ミトン・インベスターズのニール・ビレル最高投資責任者(CIO)は「トラス元首相の予算案が公表された当時の出来事に等しいゆっくりした燃焼が起きつつあるようだ。市場がうまくいかないと主張する地点に達しつつある。そのような税水準の引き上げ、そのような歳出削減を行いながら、成長につながるとは考えられない」と指摘した。
今回の動きはある意味で、執拗(しつよう)な物価圧力と膨れ上がる政府債務、勢いを欠く経済成長という投資家にとって今の最悪シナリオを全て反映する結末といえる。一部のエコノミストによれば、他の欧州諸国と比べ影響は少ないと思われるものの、トランプ氏が公約した関税のリスクに英経済も同じようにさらされている。
シュローダー・インベストメント・マネジメントの債券ストラテジスト、マーカス・ジェニングス氏は「高い利回りは借り入れが増えることを意味し、財政不安がさらに高まる負のフィードバックループが生じている。それは英国にかなり特有のものだ。スタグフレーション(景気停滞下のインフレ)的環境を投資家は不安視している」と分析した。