だからユニクロは「大企業病」にならなかった…柳井正が2011年元旦に流した全社員メール"過激な言葉"の背景
■企業の成長と衰退は常に紙一重 アナログ携帯電話で大成功したために、デジタル化の取り組みが遅れたモトローラも、典型的な「成功の復讐」にはまってしまった企業のひとつでしょう。一方でGE(ゼネラルエレクトリック)は、祖業はエジソンが発明した白熱電球ですが、現在、GEの売上高に占める白熱電球の比率はほとんどありません。中興の祖であるジャック・ウェルチ氏による経営改革で、事業ポートフォリオの見直しに成功しました。金融業と製造業の複合経営は世界中の製造業のお手本になりました。 ただ、GEは今、その複合経営が行き詰まり、電力タービンや医療機器などの製造業に専念しています。企業の成長と衰退は、常に紙一重なのです。こうした「成功の復讐」のワナを、柳井さんは当然熟知しています。ユニクロが目指しているのは「イノベーターのジレンマ」とは無縁の企業です。自己否定を恐れずに変わり続ける企業です。 過去に成功したのはそのときの製品やサービス、戦略が環境に適合していたからに過ぎません。環境は常に変わるわけですから、企業も常に変革を起こし続けなければいけないのです。 ■社員の変革を実現できるのは唯一「仕組み」 だから、変わり続ける。それも、経営陣だけが変革を叫んでも限界があります。カリスマ経営者が変革を起こせたとしても、それでは持続性がありません。その経営者が去ったらおしまいです。 だから、ひとりひとりが変わり続けなければいけないのです。誰かに依存せずに、みんなが経営者の意識を持って仕事に臨まなければいけません。組織の成長は、そのひとりひとりの「変革」の力の総和にかかっているわけです。 もちろん、「変革を起こせ」「ひとりひとりが経営者の意識を持て」とただ叫んだところで、あまり実効力は上がらないでしょう。そこで、実践させるのに必要になるのが仕組みです。 まず、目標を高く設定します。たとえば、柳井さんは「グローバルでナンバーワンのアパレルブランドになる」とよく宣言しています。今はスペインのインディテックス(ZARA)、スウェーデンのH&Mヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)に続いて3位です。単純に売り上げだけで比較するとインディテックスはユニクロの約2倍で5兆円以上の売り上げがあります。正直、少し遠いですね。まさに大きな変革を起こさないと届かない距離感といえます。