1980年代以来のガンプラ品薄が映す根強い人気と転売の〝影〟 街の模型店は苦境に
アニメ「機動戦士ガンダム」に登場する人型兵器「モビルスーツ」のプラモデル(ガンプラ)の品薄が続いている。製造・販売するバンダイスピリッツはここ数年、年10%の目標を掲げて生産能力増強を続けてきたが、需要増に追いつかず、社会問題化した1980年代以来ともいえる深刻な状況だ。背景には79年の放映開始以来、次々と新たな映像作品が登場し、幅広い世代のファンを獲得してきたことがある。海外での需要増や転売の横行が品薄に拍車をかける。新しい工場が今年度内に稼働する予定で、品薄解消が期待される。 【グラフィック】「ガンプラ」は多様なアニメ作品をベースにした商品群が特徴だ ■製造会社「大変なご迷惑」 「問屋にガンプラを頼んでも、10分の1とか2しか入荷できない。特に人気の商品は全然、入らなくなっちゃった」。東京都内の模型店経営者はこう打ち明ける。 50年以上、地元の模型ファンに愛されてきた店の中には、今は生産されていない「レア」な商品を含め、戦車や自動車、電車などのプラモデルが整然と並ぶ。だが、数えるほどしかないガンプラの周りの棚だけは空きが目立つ。 ガンプラを思うように仕入れられなくなったのは4~5年前。新型コロナウイルスの感染拡大で自宅にいる時間が長くなり、「巣ごもり消費」が拡大し、プラモデル作りを楽しむ人が増えたようだ。バンダイスピリッツの高橋誠執行役員は「大変ご迷惑をかけている状況が続いている」と話す。 品薄で想起されるのは80年代だ。82年1月には、千葉県のスーパーでガンプラを購入しようとエスカレーターに殺到した小中学生ら約250人が折り重なって倒れる事故が発生。都内のこの模型店にも、入荷日には店外に300メートルにもなる行列ができて、買いに来た子供の自転車置き場に困ったほどだったという。 ■映像作品と「進化」が牽引 品薄の根幹にあるのは、ガンダムの根強い人気だ。第1作と同じ世界での出来事を描き、登場人物も共通する「宇宙世紀」シリーズに関しては今秋、米動画配信サービスのネットフリックスで「機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム」が始まる。宇宙世紀以外でも、2002年に放映が始まったテレビアニメ「機動戦士ガンダムSEED」シリーズの最新作の映画が、今年1月に公開された。アニメの提供開始に合わせて、登場するモビルスーツのプラモデルを発売することで、新しいファンを取り込んできた。映像作品は現在、第1作を手掛けた日本サンライズをルーツに持つバンダイナムコフィルムワークスが手掛けており、グループ内で連携を強めている。 ガンプラは当初、全ての部品が同じ色で、塗装の必要性が大きかったが、1983年に部品ごとにあらかじめ必要な着色がされている商品が登場。はめ込みで組み立てられ、接着剤を使わなくてもよい商品も出た。造形や可動部分の洗練を含め、技術は進歩してきた。