尊みを感じて桜井、コスプレを蔑まれた過去…「今では立派な仕事になりましたと胸を張って言える」
強烈な「楽しい!」という感情
──幼少期の桜井さんは、どのような子どもでした? 桜井 社交的というには開放的すぎで、とにかくよく喋るタイプでした。特に中学時代はすごかった。私の通う中学はアニメを観る習慣がない子がほとんどで、当初は私がアニメや漫画の話をしても一切話が噛み合わなかったんです。 私はとにかく仲間を増やした方が楽しいと思ってしまう人間のため、かみ合わせるために「『DEATH NOTE』を観ろ!なんなら家に来い!!」と誘い、みんなに初音ミクの動画やアニメを観せて布教しまくっていたんです(笑)。そこから徐々にクラス内に『少年ジャンプ』を読む子が増えていき、情報交換しあったり、互いに書いた“夢小説”を回し読みしたりしていたんです。 感化された友だちが、また周囲にアニメや漫画の面白さを伝えていって……その結果、全校にまで広まり、最終的に地域で有名な「アニメ大好き学校」になってしまいました(笑)。 ──それは強烈な種を蒔きましたね(笑)。話は遡りますが、コスプレという概念を知ったのはどこからでしょうか? 桜井 コスプレ以前に『DEATH NOTE』のミサミサの影響で「ゴスロリ」が好きになったんです。色々とゴスロリについて調べる中、ウィッグをかぶれば金髪になれるんだ!と知って、今度はウィッグについて調べていくと、緑色のすっごく長いツインテールをした人が出てきたんです。「これ、初音ミクじゃない!? なんでこの人ミクの恰好しているの?」と気になったところ、「コスプレ」という文化があると知って。そこから興味を強く持ち始めました。 ──興味から本格的に行動に移るきっかけは別にあったのでしょうか? 桜井 私はものすごく変身願望が昔から強く、「何かになりたい……いや、なる!」と常に考えるような人間で。確か、『おジャ魔女ドレミ』のどれみになりたい!と思って。そこで母に、「衣装着たい!」とおねだりしたんです。母は昔から裁縫が趣味で、私のピアノの発表会で着るドレスや、保育園のお遊戯会で使う衣装を全員分作るような人で。きっと母に頼めば大丈夫だと思ったんでしょうね、案の定「作ってあげるよ」と作ってくれた……はずです、多分(笑)。 中学に入ってから本格的にコスプレがしたくなり、学校でコスプレ仲間を増やそうと興味がありそうな子たちに声をかけて、体育館貸し切って撮影しあって遊んでいたんです。そのうち、秋田でも小さな同人誌即売会とコスプレイベントが合体したような催しが開催されていたのを知り、そこに友だちを誘ったんですよ。 ──初参加の感想はどうでした? 桜井 初イベントでは、巡音ルカのコスプレでした。普段着ない衣装を着て推しになれた瞬間、興奮しましたね。強烈な「楽しい!」という感情が急激に襲ってきたんです。しかも、好きな仲間が集まって好きな推しのコスプレを楽しんでいる状況に、脳汁ドバドバの中毒症状になってしまって。 もっとこの楽しさをみんなに共有したくて、コスプレをした事ない友だちにも、「脚キレイじゃん!コスプレ、似合うよ!!」って言いまくって、コスプレ沼に沈めていく日々でした……こう話すと私、本当に悪いヤツですね(笑)。