女川原発2号機が再稼働、長期停止で人材・供給網に劣化リスク
東北電もブルームバーグの質問に対する書面回答で「原子力産業は高度な専門知識と技術が求められる」として若手の技術者や科学者の育成や確保が重要だと説明。ただ、「人口減少に伴い、優秀な人材の確保が難しくなっている」とする。必要な人材確保のため、会社説明会やインターンシップの拡充や職場見学の実施など学生への積極的なアプローチを続けているという。
原子力規制委員会の山中伸介委員長は23日の記者会見で、長期停止による女川原発の設備が経年劣化している懸念については、しっかりと検査をしているため「特段大きな心配をしていない。むしろ運転員の育成だとか、そういったソフト面での対応というのが重要になってくる」との考えを示した。
東電の福島第一原発と同じ「沸騰水型原子炉(BWR)」である女川原発2号機の再稼働は電力業界にとって大きな節目だ。福島第一原発事故発生後に、再稼働した12基は全て「加圧水型原子炉(PWR)」で、BWRの多くが再稼働のめどさえ立っていない。
東京科学大の奈良林氏は、女川の再稼働により今後はBWRを持つ他の電力会社は従業員を同原発に出向させることで自社の原発が再稼働する際にはその経験を生かすことができるとし、「まず一基動くのは非常に大事」と話す。
武藤容治経済産業相は、29日の会見で「東日本の原子力発電所の再稼働は極めて重要である」とした上で、女川原発2号機の起動は、東日本の原発、 国内のBWRとしても震災後初めての起動であり、「大きな節目になる」とコメントした。
供給網への影響も見逃せない。日本原子力産業協会の増井秀企理事長は、PWRとBWRとは炉型の違いから異なるサプライヤーが部材を供給する場合もあり、女川再稼働は「サプライチェーンの強化からも好ましいニュース」と話す。
国内企業では三菱重工業がPWR、日立製作所と米ゼネラル・エレクトリックの合弁会社の日立GEニュークリア・エナジーと、東芝傘下の東芝エネルギーシステムズがBWRを開発する。3社を頂点に約400社が供給網に連なるが、先の需要が見通せない中で川崎重工業などの大手企業を含め12-20年の間に20社が原子力事業から撤退した。