農家カフェに学ぶ「緑茶」消費拡大のヒント
緑茶の消費が低迷している。1世帯当たりの年間消費量は毎年、過去最低を更新する状況だ。しかし、近年では日本茶カフェが若い世代や外国人に人気を集めていると茶業関係者から聞いた。彼らは、緑茶やカフェにどんな魅力を感じているのだろうか。農家直営のカフェを訪ね、緑茶の消費拡大のヒントを探った。 【画像】農家カフェの茶畑テラス席
和紅茶を気軽に
静岡市清水区のグリーンエイトカフェ。茶農家8戸で立ち上げた農業法人、グリーンエイトのカフェ兼直売店だ。JR清水駅から車で20分ほど離れた中山間地の両河内地区に位置する。 茶工場の一角を改装した店舗は、古民家の廃木材を使った手作りの温かみのある雰囲気で、ほっとする空気が漂う。茶畑テラスも整えた。ドリンクメニューは、両河内特産の浅蒸し茶をはじめ、和紅茶やほうじ茶、深蒸し茶など10種類ほど。 東日本大震災の風評被害を受けて同社が和紅茶に力を入れたり、市場出荷から直販へと軸足を移したりする中で、販売拠点をつくろうと2015年にオープンした。代表の北條広樹さん(43)は「気軽に立ち寄ってもらえる店を目指した。和紅茶を前面に押し出すことで、敷居を低くした」と振り返る。
老若男女が来店
当初は、和紅茶の珍しさが新聞やテレビで取り上げられた。カフェの雰囲気や提供するドリンクの魅力が伝わり、来店した客がリピーターになった。 インスタグラムやX(旧ツイッター)で積極的に情報発信をする。カフェのメニューだけでなく、その時々の畑や茶工場の様子も紹介。カフェと茶の両方に関心を持ってもらうようにした。今では年間3000人が訪れる人気店となった。若者から高齢者、外国人ら、年代や人種に偏りなく来店している。 客の増加に合わせて和紅茶だけでなく、緑茶も売れるようになったという。北條さんは「若者は茶を知らない。興味を持っていない。しかし、消費者と緑茶との接点をつくり、味わってもらえば、魅力は伝わるはずだ」と強調する。
茶畑からも発信
カフェに客として訪れていた、茶商マルヒデ岩崎製茶の平野大介さん(49)は「このカフェの魅力は、茶のおいしさだけでなく、北條さんが茶農家として消費者に茶を伝える熱意だ」と話す。 このカフェに来店した若い人のほとんどが、初めて茶畑を見る。若い世代は、茶がどのように育っているのか、どうやって製茶されているのかを知ることができる。北條さんは、このカフェを通じた消費者と緑茶を結び付ける役割を担う。 また、北條さんは、若い世代が魅力的だと思う発信方法や、分かりやすい説明を心がけている。商品づくりでは、急須を持っている若者が少ない現状を踏まえ、ティーバッグを採用。湯の量、温度、茶葉の量、抽出時間をカードにまとめ、誰でもおいしく入れられる方法を伝授する。 海外ブームの影響か、茶のスイーツがテレビで紹介されることも増えてきた。「今がチャンスだ」と北條さんは助言する。