防災ストーリーが「日本遺産」になった唯一のまち、和歌山「広川町」で自然との共存を学ぶ
ひと目で津波の恐ろしさを体感!「津波シミュレーション」
広川町の中心地に位置する「稲むらの火の館」は、町の観光・教育の拠点施設だ。悟陵の生家、西濱口家を見学できる「濱口悟陵記念館」と「津浪教育防災センター」からなり、毎年3万人の観光客が訪れる。記念館には悟陵の生い立ちから晩年までのエピソードが展示されており、地域の人々に長く愛され、敬われていたことがよくわかる。
津波教育防災センターは、稲むらの火の人命尊重の精神をふまえ、「津波に襲われたときにどのように命や暮らしを守るか」が学べる教育施設だ。1階には3D津波映像シアターや防災体験室などがあり、津波のリスクとその対策がわかる。なかでも注目なのは、海沿いのある町のジオラマを、ミニ津波が襲うようすが見られる津波シミュレーション。かわいらしい家や木々が波に飲み込まれていき、その恐ろしさと備えの重要性が再確認できる。
防災センターのあるまちの中心街には、古民家や古いレンガ塀などが多く残されており、ノスタルジックな情緒たっぷり。赤レンガは床にもつかわれ、防火の役割を果たしていたそうだ。町並みを抜けて海に向かうと、悟陵と町人たちが築いた堤防が見えてくる。堤防の海側に松の木、陸側に、はぜの木が並び、気持ちのよい木陰をつくっていた。その向こうには、穏やかな黒潮が流れる海。波がキラキラ輝いている。 海や山の幸グルメも満載で、海や川、山遊びも存分に満喫できる広川町。海や山を正しく恐れ、共存してきた人びとに出会える旅を、ぜひ体験してほしい。 Photo:横江淳 Text:萩原はるな