そもそも「安保関連法案」とは? PKOや他国軍の後方支援をどう規定
国連ではないPKOにも参加可能に
また、PKO法改正案は、国連が実施するのではない平和維持活動(「国際連携平和安全活動」と名付けられています)への自衛隊の参加を可能とすることを新たに提案しています。PKOは通常国連が主体となって行われますが、そうでなく、数カ国の合意で実施する場合も認めているのです。その場合も紛争当事者の同意が条件となっていることなど基本的な仕組みは国連のPKOと類似していますが、紛争が終了していることは必ずしも条件となっておらず、紛争当事者が「武力紛争の停止およびこれを維持することに合意」している場合もその条件を満たすとみなされています。 国連ではないPKOへの参加を認めることは、紛争により危険にさらされている住民の保護などのために機動的対処できる面があるでしょうが、自衛隊の出動を国連でない機関や国による要請の場合にまで認めると、それらの機関や国と意見が違う国が出てきて、争いになり、自衛隊の派遣が反対される恐れがあります。 また、派遣された部隊が国連の指揮下にないことも、後述する多国籍軍と同様に、自衛隊の派遣について争いが生じ、批判される原因となるおそれがあると思われます。 PKO改正法案はしきりに「いずれの紛争当事者にも偏ることなく実施」することの必要性を述べていますが、国連による自衛隊の派遣でない場合に、どちらの当事者にも偏らないで実施することが困難なことを法案みずから示唆しているように思われます。
「多国籍軍」への後方支援の範囲は
国際貢献面での今回の法整備においては、「国際社会の平和および安全を脅かす脅威を除去するために国際社会が国連憲章の目的に従い共同して対処」し、「我が国が国際社会の一員としてこれに主体的かつ積極的に寄与する必要がある」場合が想定されており(国際平和共同対処事態)、国際平和支援法案はその場合の日本の自衛隊のあり方を定めています。これがいわゆる「多国籍軍」の場合であり、紛争は終了していません。 この事態では紛争は継続しており、日本が国際紛争に巻き込まれることを厳禁している憲法に抵触しないか、問題になりえます。これについて、国際平和支援法案は、支援として具体的に行う行動の範囲・種類、支援を行なう場所、国連の決議などによって歯止めをかけ、憲法違反になるのを防ごうとしています。 自衛隊が行なう行動としては、捜索救助、船舶検査などとともに、いわゆる後方支援として物品や役務を「共同して対処する国の軍隊(つまり多国籍軍)」に提供することが想定されています。武器について言えば、提供は認められていませんが、輸送は認められています。これらの行動は集団的自衛権の行使として認められているのではなく、「武力の行使」でないとの考えに基づいており、テロ特措法やイラク特措法で認められていました。 後方支援は、武力行使を伴う戦闘行為ではないのは明らかですが、紛争中の当事者から中立の立場で実施することはできない、戦闘している国に後方支援すると、やはり敵対行為とみなされるとも指摘されています。 支援を行なう場所については、「現に戦闘行為が行われている現場では実施しない」と明記されています。 これは、支援活動を地理的に戦闘地域と切り離すための規定ですが、複雑な状況である現場においてそれははたして可能か、疑問の余地があります。国際平和支援法の前身であったイラク特措法の国会質疑において、当時の小泉純一郎首相が「どこが戦闘地域で、どこが非戦闘地域か、日本の首相にわかる方がおかしい。自衛隊が活動している地域は非戦闘地域だ」と答えたのは有名な故事ですが、「戦闘地域」と「非戦闘地域」の境界は明確でない、明確になしえないことを雄弁に語っているように思われます。「戦闘地域」でなければ紛争に巻き込まれないというのは机上の空論になるおそれがあります。