そもそも「安保関連法案」とは? PKOや他国軍の後方支援をどう規定
紛争中の「多国籍軍」協力は憲法違反?
国連決議についても問題がありえます。激しい紛争の場合は国連安保理決議がなかなか成立しません。また、決議があるかないかさえ争いの対象になることがあります。イラク戦争がまさにその例であり、米英豪などが2003年3月、イラクに対する攻撃に踏み切った際に決議の有無が問題となり、独仏などはないという立場を取りました。 また、PKOの部隊は国連の指揮下に入りますが、多国籍軍は特定国の司令官が全体の指揮を執ります。ただし、PKOの場合はもちろん、多国籍軍の場合も国連の決議があることが多いので、多国籍軍としてもその決議に従う義務があります。その意味では、司令官といえども自由に行動できるわけではありませんが、国連の指揮下にあれば、決議だけでなく、実際の活動においても特定国の意思が働く余地はきびしく制限されます。 このように考えると、紛争が継続中に多国籍軍に協力することは憲法第9条が禁止する国際紛争での武力行使の禁止に違反する恐れがあると言わざるをえません。機雷の除去についても紛争が継続中であれば人道的な措置という理由だけでは説明しきれません。 多国籍軍への協力が憲法上問題となりうることは今回初めて出てきたことでなく、テロ特措法やイラク特措法にあったことですが、恒久法である国際平和支援法を成立させると今後繰り返し問題になる可能性があると思われます。 (美根慶樹/平和外交研究所)
■美根慶樹(みね・よしき) 平和外交研究所代表。1968年外務省入省。中国関係、北朝鮮関係、国連、軍縮などの分野が多く、在ユーゴスラビア連邦大使、地球環境問題担当大使、アフガニスン支援担当大使、軍縮代表部大使、日朝国交正常化交渉日本政府代表などを務めた。2009年退官。2014年までキヤノングローバル戦略研究所研究主幹