赤外光を吸収する透明な太陽電池 窓ガラスへの利用に期待、阪大などが開発
坂本教授らは、LSPRを示す金属硫化物のナノ粒子に波長1.1マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルの赤外光を当てると、光触媒として当時世界最高の効率で水素が生成することを発見している。
光触媒の実験で学生が「赤外光を当てても見えにくい」と話すのを聞き、坂本教授は「見えないというのは透明ということ。発見した光触媒を太陽電池に転用したら(黒い)シリコン系の太陽電池と差別化できる」と考え、2019年、同じくLSPRを示すスズをドープした酸化インジウムナノ粒子を光吸収材に応用すると透明な太陽電池をつくることができると発表した。
熱線遮蔽シートを今夏にも先行発売へ
LSPR材料による透明な太陽電池を実用化するため、坂本教授らは2021年に京都大学発ベンチャー企業「OPTMASS」(京都府宇治市)を創業。変換効率は、カドミウムと硫黄、あるいは銅と硫黄を含むナノ粒子をLSPR材料として使うと1.1マイクロメートルの赤外光を当てた際に4.4%まで上がることを2022年に発表した。
現在、材料などを改良し、変換効率は6%ほどまで上がってきている。ただ、可視光や紫外線も含む太陽光を当てたときには1%程度まで下がってしまうため、改良の余地は大きい。
また、実用化には窓ガラスサイズなど、大面積の太陽電池にすることが求められる。一部でもピンホールがあると、発電量が大幅に低下するため、太陽電池の大面積化には、材料であるナノ粒子を広く均一に伸ばす技術も求められる。
LSPR材料には戸外から室内に入る熱線を遮蔽する効果もある。OPTMASSはLSPR材料による熱線遮蔽シートを今夏にも先行発売するべく、開発を進めている。試作品を見ると、シートは透き通っているが少し緑色かがっていた。OPTMASSが掲げる「街を森に変える」という目標を感じさせる緑色だった。 長崎緑子/サイエンスポータル編集部