「炎上」恐れるZ世代の葛藤 人前でほめられるのも苦手
Z世代は、「多様性」「自分らしさ」という価値観を重視する世代です。実はSNSでの発信を見ると、それとは相反する「調和」を重視し、型にはまりたいという傾向も見えます。「自分らしさ」を追求する一方で「調和」も意識するのはなぜなのでしょうか。今回はZ世代が抱いている複雑な心理をひもときます。 ●「炎上」を身近に見てきたことで「調和」思考も Z世代が重視する「多様性」「自分らしさ」という価値観。この価値観が根付いた背景の一つには、Z世代が新型コロナウイルス禍を経験したことが挙げられます。自己を形成する重要な時期にコロナ禍で内省の機会が増え、自身の存在意義を考える時間が多くなりました。そのためZ世代は「自分らしさ」というアイデンティティーを見つけたと考えられます。 もう一つの重要な要素がSNSです。SNSを通じて世界中の情報に触れてきたZ世代は、各国の人々が発信する多様な価値観や表現方法を受け入れています。 Z世代のSNSの使い方も、他の世代と比べて特徴的です。Z世代がメインに使用するSNSは、「発信」に重きをおいたX(旧ツイッター)やインスタグラムです。これらのSNSでは「いいね」などの定量評価をわかりやすい形で受けられます。 一方でZ世代より年上の30代前後のミレニアル世代は、「交流」を目的としていた傾向が強いフェイスブックやミクシィといったSNSを利用してきました。そのためZ世代は他の世代よりも、周囲からの承認欲求が強く、他者よりも少し飛び抜けたいという気持ちが強く醸成されたと考えられます。 ではなぜZ世代は、「自分らしさ」の対極にある「調和」も好むのでしょうか。それはSNSに触れてきた世代だからこそのジレンマがあるからではないかと私は考えています。 誰もが自由な発言や表現ができるSNSは、時には他者から批判されてしまう「炎上」がつきものです。近年では炎上をきっかけに、製品の不買運動や発信者が退職に追い込まれるケースが相次いでいます。炎上は、企業・一般ユーザー問わず影響力の大きいリスクとして認識されています。Z世代は、こうしたSNSの炎上をそばで見てきたからこそ、周囲との調和を図ることでSNS、さらには現実社会での炎上リスクを抑え、自分自身を守ろうとしているのではないでしょうか。