「炎上」恐れるZ世代の葛藤 人前でほめられるのも苦手
集団に同化したいZ世代
ビジネスシーンにおいてZ世代は、「人前で褒められるのが苦手」とも言われます。褒められるという行為は、周囲よりも自分に注目が集まることを意味します。つまり、人前で褒められることが苦手というZ世代の心理には、「調和」を乱したくないという葛藤があるのではないでしょうか。 同じような例は、Z世代の学生生活にも見られました。先日、FinTでインターンとして働く大学生と話す中、大学で講義を受ける際の座席配置がZ世代と他の世代では大きく異なる点が分かりました。 いずれの世代も後方座席に人が集まりやすいことは共通しています。ただZ世代は、前方に座る人がそもそも少なく、かつ後方に座席間を埋めるようにびっしりと座っているとのことです。他の世代は、前方に座る人が一定数いたり、後方に座る際も座席間を空けるようにポツポツとまばらになっていたりしていました。 このようなZ世代の行動について、集団に同化することで自身の存在感を薄めているのではないかという一つの仮説が浮かび上がります。 講義中に教授から指名されたら、否が応でもそれは「目立つ行為」となります。前方に座ったり教授の質問に答えることで、他の学生から「良い評価を得ようとしている」「周囲と比較して、すごく真面目で勉強熱心である」と受け取られることを恐れ、集団に同化する「調和」の行動に出ているのではないでしょうか。 ●型にはまりつつもその上で個性を演出したい Z世代は、思春期である学生時代にコロナ禍で自宅待機を余儀なくされたため、その反動で過去に享受するはずだった横のつながりを強く求める傾向があります。Z世代は、コミュニティーに帰属することで安心感を得ようとした結果、自己表現を追求しつつも、型にはまることで調和を保とうとしているのかもしれません。 例えばZ世代によるティックトック(TikTok)などへの投稿内容にもその傾向が表れています。バズっている音楽やダンスを活用することでコンテンツを流行の形を押さえつつ、元ネタにはないアドリブを入れたり、ファッションで個性を出したりすることでオリジナリティーを演出したりする投稿が目立ちます。 これは、自分が投稿したコンテンツをバズらせたい一方、過度に目立ったり炎上したりすることも避けたい。一種の自己表現におけるコスパ・タイパ思考の表れではないでしょうか。 近年Z世代の間で人気を集める、アートカフェやオリジナル香水づくり、パーソナルカラー診断などにも同じような行動様式が見られます。こちらもアウトプットの型は決まっているものの、その中身で個性を表現したりするような取り組みです。受け入れてもらえる安心感の中で個性を見いだしてほしいと願う、Z世代なりの思いの表れのように感じました。 このようにZ世代は、自分らしさを重視する一方で、それと同じくらい仲間や社会との調和や、コミュニティーに帰属する安心感を求める傾向があります。つまりビジネスの現場などでZ世代とコミュニケーションを取り、力を発揮してもらいたい場合、「集団の一部である」という帰属意識をまず与えることで安心感を持ってもらい、その上で自分らしさや個性を引き出すアプローチが有効でしょう。
大槻 祐依