アナタの体に棲んでいる「微生物」は約1.4kg! ほぼ「脳と同じ重さ」 人間は彼らなしに生きていけない
ヒトは細菌のおかげで健康維持できている
あなたは何兆、何十兆もの小さな生き物の住まいであり、彼らは驚くほど多くの点で役立ってくれている。あなたが自分では利用できない食物を分解してエネルギーの約10%を供給し、その過程でビタミンB2やB12などの有益な栄養素を抽出する。 スタンフォード大学で栄養学研究の指導教官を務めるクリストファー・ガードナーによると、ヒトは20種類の消化酵素を生成し、それは動物界ではなかなか立派な数字だが、細菌は1万種類、つまり500倍多く生成する。「彼らがいなければ、わたしたちははるかに栄養状態の悪い人生を送っていただろう」とガードナーは言う。
地球は“微生物の惑星”である
ひとつひとつは限りなく小さく、彼らの命ははかない。平均的な細菌の重さは1ドル札の重さの約1兆分の1で、命の長さはほんの20分ほどだ。しかし、集合的に見ると、まさに侮(あなど)りがたい存在感がある。 あなたが一生のうちに手に入れられる遺伝子は、持って生まれたものだけだ。もっといい遺伝子をどこかから買ってきたり、新品に取り替えたりすることはできない。しかし細菌は、まるでポケモンカードのように、互いに遺伝子を交換できるし、死んだご近所さんからDNAを拾うこともできる。 「遺伝子の水平伝播(でんぱ)」として知られるその機能のおかげで、自然や科学研究にどんな目に遭わされようと適応できる能力が、飛躍的に高まる。しかも細菌のDNAはあまり正確に校正されないので、しょっちゅう突然変異が起こり、ますます遺伝的な適応力が向上する。 ヒトは、変化の速度については細菌に遠く及ばない。大腸菌は1日に72回増殖できる。つまり、わたしたちが全人類史にわたって築き上げてきたのと同じ数の新世代を、3日でつくれるということだ。理論上では、たった1個の細菌の親が、2日以内で地球の重さより重い子孫の集団を生み出せる。3日で、その子孫は観測可能な宇宙の質量を超えることになる。そんなことは決して起こりえないが、わたしたちの周囲にはすでに、想像を絶するほど多数の細菌がいる。もし地球上のすべての微生物をひとつの山に、他の動物すべてをもうひとつの山に積み上げたとしたら、微生物の山は動物の山の25倍大きくなるだろう。 だから、勘違いしてはいけない。ここは微生物の惑星なのだ。わたしたちは彼らの気まぐれのおかげで、ここにいる。微生物たちにとって、ヒトはまったく必要ない。ヒトのほうは、彼らがいなければその日のうちに死んでしまうだろう。 *** この記事の後編【「口づけで10億個の細菌が移動する」 “体を張った実験”で明らかになった、風邪の「予想外な感染ルート」の真実】では、細菌の感染ルートの意外な事実について紹介している。 ※『人体大全 なぜ生まれ、死ぬその日まで無意識に動き続けられるのか』より一部抜粋・再編集。
デイリー新潮編集部
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