21世紀のクーペ・マーケットを占う “次期スカイライン・クーペ”は売れるか?
セダンのクーペ化
さて、今度は話がセダンに飛ぶ。セダンの世界では「居住性重視ならミニバンへ」という流れで、フル4シーターとしてのニーズ要素がどんどん抜け落ちている。その結果、かなりな勢いで4ドアクーペ化が進んでいるのだ。出自がセダンだから少し事情が違うとも言えるが、本来はクーペに後ろのドアをつけるのは貧乏臭くてカッコ悪い。女性のハンドバッグをネギや大根が入るようにデカくするようなもので、クーペの洒脱感は台無しだ。 原理主義的にはそうなのだが、デザイナーが頑張った結果、4ドアクーペもそれなりにスタイリッシュになってしまった。それにつられて本来のセダンまでかっちり四角いスタイルでは無くなっているのである。いかにもセダンというスタイルのクルマはもうセンチュリーくらいまで行かないと無い。スカイライン・クーペと同じニッサンのラインナップを見てみれば、フーガもシーマもだいぶクーペ的デザインにシフトしているのだ。
こうして見ると、スポーツカー、セダン、4ドアクーペの全てがクーペの陣地に包囲網を敷いて侵攻をかけている。他の車種がみなクーペスタイルを目指した結果、真ん中のクーペそのものが真空地帯になっているのだ。 速さを求めるならスポーツカーを、実用性を求めるなら4ドアセダンを選んだほうがいい。その中で2ドアクーペが一体何を訴求してシェアを獲得しようとするのか、そこが見えて来ない。 原理主義的な2ドアクーペを欲して、フォーマルとパーソナルを使い分けたければ2台のクルマを持たなくてはならない。それが可能な人もいるだろうが、数としてどの程度いるのだろうか? トヨタはRCの月販台数目標でその数を80人と見切った。2台は持てないからこそセダンがクーペ化して1台でどちらにも使えるようになって来ているのが現実なのだ。
ここまでツラツラと書いたような「観念論的クーペ」をどれだけの顧客が理解してくれるのかを考えると絶望的だと思う。自分で書いてきて言うのも何だが、今の時代に通用するとは思えない考え方だと思うのだ。 結局のところ、この21世紀において2ドアの正統派クーペは、誰に何を訴求する商品なのかが今一つ判然としないのである。そこに新しいマーケットが芽吹くと思っているのか、それともイメージリーダーにさえなれば売れなくてもいいのか? トヨタとニッサンがそこに何を見出しているのか解らないだけに興味深く見守っていきたい。 (池田直渡・モータージャーナル)