21世紀のクーペ・マーケットを占う “次期スカイライン・クーペ”は売れるか?
スポーツカーのクーペ化
ということで話いったんスポーツカーへ飛び火する。本来、スポーツカーはマツダ・ロードスターに代表される「運転そのもの」を楽しむための道具。運転を楽しむためには、ダイレクトな操作感と軽量性が優先されるため、そこに安楽や豪華は求めない。しかし、そんなストイックな商品を受け入れられる顧客は当然限られるので、当然ながらもうちょっと快適にという客が出てくるのである。 ベンツのSLはセダンの快適性をそのままにスポーツカーのスタイルにまとめたもの。厳しい言い方をすればスポーツカーからスポーツカーのコア要素を引いたクルマだ。邪道と言えば完全に邪道だが、運動性の追求を止めて、スポーツカーを形だけに割り切る目の付けどころは喝采をもって迎えられ、結果的にはマーケットの心をがっちり掴むことに成功した。 レクサスSCは、その前身となった40型ソアラがベンツSLのフォロワーとしてデビューしたため、この系譜のスポーツカーだと筆者は解釈している。しかしこうやってスポーツカーに快適性や豪華さを盛り込まれると、クーペとの境界線は否応なく曖昧になる。
一方、クーペの方はどうかというと、ただ洒脱であればいいと考えず、速く走らせたい人が出て来る。贅沢な内外装のために概して値段も高いので「優雅なら安いクルマより遅くてもいい」とはなかなか言ってもらえない。そこで動力性能の上積みをして、限りなくスポーツカーに近づいたモデルが出てくる。 例えばジャガーのFタイプだ。ジャガーの場合、このモデルの先祖にあたるEタイプはその時代において明らかにスポーツカーだったのだが、その後継となるXJ-Sから軸足をクーペに移した。Fタイプは走行性能から言えば、スポーツカーだとも言えるが、豪華さや洒脱さを抜きには成立しないのでギリギリでクーペの仲間だと考えられる。これがポルシェ911であれば、豪華トリムを外すことを積極的に望む顧客がいて、そういう仕様もあるのでスポーツカーに分類したくなる。クーペとスポーツカーの狭間はもうほとんどシームレスになってしまっているのだ。