「令和の米騒動」の原因は猛暑やインバウンドだけじゃなかった...深刻な米不足が今後も起き続ける「本当の理由」
なぜ政府は田んぼを減らしたのか
1960年代末まで、原則として米はすべて政府が生産者から買い上げ、消費者に売り渡す制度になっていた。米が余れば生産者に支払われる米の価格(米価)も下がるのが自然だが、当時は農協が強い政治力を有しており、「米価闘争」とも呼ばれる政治運動が展開された結果、なかなか生産者に支払う米価を下げられなかった。 その結果、消費者に売り渡す時の米価より、農家に支払う米価の方が高い「逆ザヤ」と呼ばれる事態が発生。こうなると政府の抱える赤字は増える一方であり、1971年からは米の生産を抑制する政策へと舵が切られた。 具体的には、水田を麦や大豆の畑に変えることが推奨され、これに協力した農家には転作奨励金が支払われた。「減反」の「反」とは田の面積単位であり、文字通り「反(田)を減らす」政策だったのだ。
「減反政策」は廃止されたはずだが……
その後、政府が米を買い取る制度は1990年代には完全に廃止された。だが、減反政策そのものは無くならなかった。消費者の米離れが進んでいるなかでは、生産量をコントロールしないと米価が暴落しかねないからだ。米価が暴落すると米を生産する農家が減り、食料安全保障上、極めて重大な問題になる。したがって、米価を維持するためには減反政策が必要不可欠だった。 しかし、今から約10年前に、政府は減反政策の「廃止」を決定した。「農家が自らの経営判断で作物を作れる農業を実現する」ことが望ましいとして、当時の安倍政権が2018年度から廃止する方針を固めたのだ。 だが、現在もなお、政府は米生産へのコントロールを続けている。ここに「令和の米騒動」が起きたひとつの理由がある。 ………… 【つづきを読む】石破茂首相は「米騒動の救世主」となるか?公約で「政策見直し」を掲げたが…今後も起こり続ける”米不足”その「最大の原因」
市村 敏伸(農と食のライター)