なぜ『光る君へ』は大成功を収めたのか? 女性層から愛される大河ドラマになったワケ。稀有な魅力を徹底解説
『光る君へ』(NHK総合)が12月15日に最終回を迎えた。これまでの大河ドラマとは一線を画した内容で支持を集めた本作は、配信サービス「NHKプラス」で歴代最高の平均視聴者数を記録、終了しても尚、勢いは止まらない。そこで今回は『光る君へ』が特別な作品になった理由を複数のポイントから解説する。(文・西田梨紗) 【写真】伝説の名シーンが蘇る…特別なドラマになった理由は? 貴重な未公開カットはこちら。 NHK大河ドラマ『光る君へ』劇中カット一覧
第10話「月夜の陰謀」の素晴らしさと直秀(毎熊克哉)の可愛らしさ
本作には美しく、清らかなラブシーンがいくつも挿入されているが、特に第10話「月夜の陰謀」におけるシーンが心に残っている視聴者が多いようだ。月の下、道長は藤原家を捨てる覚悟を決め、まひろを海の見える遠くの国に誘う。「俺はまひろに逢うために生まれてきたんだ!」と言い放つほど道長はまひろに惚れきっている。 一方で、ふたりの関係は甘美なものにとどまらない。まひろと道長は夫婦として寄り添い合うのではなく、直秀(毎熊克哉)のような死者を出さないために世の歪を正すために力を合わせる。 まひろは道長との結婚は実現しなかったものの、自分の力で自身の役割を見つけ、「光る君へ」の物語を完成させ、越前で抱いた美しい紙に文字を書きたいという望みも現実のものとしている。女性の幸せが結婚だけではないといわれる昨今の価値観が作劇に無理なく取り込まれているのに感心した。 また、上述したように本作の「少女漫画的」な雰囲気は、作品を魅力的にすることに大きく貢献している。とりわけ、毎熊克哉が演じた直秀がまひろと道長を屋根の上から見守る姿はまるで少女漫画の一コマのようだった。彼の存在を恋のキューピットに重ねた視聴者も少なくないのではないか。
“男子ノリ”が嫌味のないシーンになったワケ
柄本佑演じる道長や、毎熊克哉が演じた直秀以外にも、本作には魅力的な男性キャストがこじって出演し、各々のキャラクターを光り輝かせた。 第7話「おかしきことこそ」における道長、直秀、公任(町田啓太)、斉信(金田哲)らが参加した打毬(だきゅう)の試合シーンは乙女心をくすぐった。 少女漫画において“白馬に乗った王子さま”の登場はありがちだが、本作ではクールビューティーな男たちが馬に乗り、試合に挑んでいた。イケメン男子たちがスポーツに励む姿は眼福であった。 さらに、この回には「源氏物語」における雨夜の品定めから着想を得ていると話題になったシーンがある。打毬の試合に出場したメンバーらが試合後に着替えるシーンである。このシーンは、まるで男子校の部室の一幕を垣間見ているようだった。 また、公任と斉信が姫たちを品定めするシーンにおける彼らの発言は特に話題となった。 ふたりはまひろを「地味でつまらない」と批判し、倫子(黒木華)についても「もったりしていて好みではない」と言い放つ。女性に対する若き男たちの失礼な物言いに老婆心から注意したくもなるが、年頃の男子らしい会話を楽しむ彼らをあたたかく見守りたくもなった。 このシーンが結果的に嫌味のないシーンになったのは、斉信を演じた金田哲と公任を演じた町田啓太の自然体の芝居と、持って生まれた柔和な雰囲気の賜物であると言っていいだろう。