中国で相次ぐ巨額追徴課税で企業家パニック、日本企業も駐在員も危ない!30年前の過少申告も摘発、その狙いとは…
■ 習近平政権の税制改革の前触れか 2023年の消費税収入は前年比3.5%減少している。とはいえ2023年の消費税が税収総額に占める割合は8.9%と小さくない。個人所得税よりも消費税収の方が大きい。 この消費税は国税として徴収されたが、税制改革後に地方が徴収し、中央に一定の割合で納める、という形に改正される、という噂がある。そして、各地方政府が、その準備としてこれまでの消費税納税状況を調査し始め、申告漏れを見つけたのであろう、というわけだ。 さらに言えば、党中央の地方に対する暗黙の圧力もあろう、という。たとえば浙江省寧波の博滙の例を考えると、この企業は寧波当局からかなりの税制優遇を受けてきた。2023年の博滙の売り上げは27.77億元だが純損益2.6億元の赤字なのだ。 2020年の上場以来4年間で博滙が収めた税金は1.84億元だが、税金還付が14.67億元にのぼる。税制の仕組みはややこしいのだが、原材料費に含まれている消費税分を申請すれば還付できるし、また寧波市独自の税制優遇や補填制度も利用したようだ。 つまり寧波市政府の庇護によってこの企業は存続できていた。 寧波に優良とされる民営上場企業が100以上集中するのはそうした優遇措置があるからで、将来性のある企業を誘致すれば、最終的には地元の雇用や産業発展に寄与して、優遇分を取りもどせる、という考えがあった(もちろん汚職や利権関係もあろう)。だが、こういう民営企業重視の発想が習近平のお気に召さないのは言うまでもない。 習近平政権は国進民退(国有企業推進、民営企業圧縮の方向性)政策を次々と打ち出し、改革開放逆走の方向性に中国経済を誘導中なのだ。そのため、寧波市として習近平政権に政治的忠誠をアピールするなら、今までの民営企業税制優遇方針を改める必要がある。 博滙に5億元の破格の追徴を言い出したのは、習近平への忠誠アピールというわけだ。博滙にしてみれば、見事な手のひら返しであり、「比較的異議がある」といったコメントが出てくるのは当然だろう。 7月に本当にこうした大規模な税制改革があり、20年、30年前の未納税がことごとく追徴されたらどうなるだろう? ほとんどの企業の資産が国や地方政府に没収され、公有経済を基礎とした社会主義市場への回帰が一気に進む、かもしれない。