中国で相次ぐ巨額追徴課税で企業家パニック、日本企業も駐在員も危ない!30年前の過少申告も摘発、その狙いとは…
■ 追徴課税で利益の4割が吹っ飛ぶ可能性 湖北省宜昌市の税務当局はわざわざ「今回の追徴税は正しいプロセスに従って税務調査を行っており、特殊な原因や背景はないので誤読しないように」とコメントを出したので、なおさら世論は不安に陥った。 枝江酒業の消費税金滞納は実はこれが初めてではない。2015年か2018 年の間に未納だった消費税、不課税費、罰金あわせて1.96億元を維維は自主的に支払い、それらは2019年の損益に計上されていた。その上で枝江酒業と袂を分かつことを決定した。だから維維が追徴金を支払う義理はなかろう、というわけだ。 ここで注意すべきは、枝江酒業は維維に対して1.23億元の債務をかかえていることだ。維維は2023年に枝江酒業に枝江酒業の株式を譲渡するときの協議で、もし税金の遡及的支払いが今後発生したとき、債務から差し引くという条項を付けていた。税務当局からの通知を発表したのち、維維は投資家たちに対して、枝江酒業に貸し付けた1.23億元は不良債権となった、と回答している。 ちなみに2023年の維維の売り上げは40.36億元、純利益は2.09億元で、維維がこの追徴金を支払うことになれば、利益の4割以上が持っていかれる。
■ 幅広いターゲット、パニックに陥る企業家 さらに6月14日、税務当局は寧波市の博滙化工科技株式有限公司に対し、5億元の追徴税があることを通知し、支払うまでの生産停止を命じた。年産40万トンのアロマティック炭素抽出装置など関連の装置を停止させられ、この日、博滙の株価は大暴落、一瞬にして13.3億元が蒸発した。 博滙は2005年に設立し、主な業務は芳香剤などの研究開発、生産、販売。2020年6月に上場、新規株式公開(IPO)を通じて4.23億元を調達、2022年8月には転換社債でさらに3億9700万元調達し、合わせて8億2000万元を集めた。 税務当局の話では、この企業は消費税の未納があり昨年11月ごろから何度も納税指導を行った上で、3月に法に基づく納税を納めるように要求したが未だ納税されていない、ということだった。企業側は「比較的大きな異議がある」と未だ支払いに抵抗しているようだ。 他にも広東省仏山の新世界酒店(ホテル)が25年前から遡って追徴税90万元。青島省の藏格鉱業は20年前から遡って増値税、資源税、法人税の未払い合計4.8億元を請求された。 広東省恵州の泰基集団は2000年から2008年の申告漏れ税金5300万元の追徴通知を受けた。湖南省岳陽の匿名デベロッパー企業は2003年から2020年までに過少申告行為があったとして追徴税1.78億元の支払いと同時に罰金4.16億元が科された。 杭州のアパレル企業・伊裳服装は2014年から2021年までに2.1億元分の税金の過少申告があり、追徴されるともに罰金3.6億元が科された。 華林証券は2018年から2021年の間の法人税2900万元の追徴を求められ、さらに1800万元の税金を支払えと通知を受けた。北大医薬も1944万元の追徴税通知を受けたという。 こうした追徴税ラッシュによって、わかっているだけで広東省の7~8社が倒産したようだ。 企業家たちがパニックに陥っていることに対し、6月18日、国税当局は「(追徴税ラッシュは)全国的に組織的に、特定の産業を狙ってやっているわけでも、集中的に税務調査を展開しているわけでもないし、20年、30年さかのぼって税務調査をしろという指示を出しているわけでもない」となだめるコメントを発表した。つまり、すべて地方政府が勝手に税務調査したもので、中央が政策としてキャンペーンとして推進しているわけではないから、安心せよ、という。まったく安心材料にならない。