中国で相次ぐ巨額追徴課税で企業家パニック、日本企業も駐在員も危ない!30年前の過少申告も摘発、その狙いとは…
■ 地方政府の財政難が理由か、それとも… 多くの専門家がこの状況の背後に何が起きているかを分析している。代表的な意見は、不動産市場が破壊され、土地再開発による錬金術が使えなくなったことで財政収入が激減、財政破綻に直面した地方政府が、儲けている企業から利益を「追徴税」の名目で奪取しようとしている、というものだ。 少なからぬ地方政府官僚が高度経済成長期に、民営企業に対して税制を優遇したり、なにがしかのキックバックを受けて「脱税」を見逃してきたりした経緯がある。税金を取り立てなくても、その企業の生産性が上がってGDPが成長すれば、当時の地方政府官僚は出世できた。 だが習近平政権になって経済が低迷しGDP成長率より習近平に忠実かどうかが出世の基準になった。そのため地方財政がひっ迫したとき、昔見逃してきた税金を今さら取り立てよう、という気になったわけだ。 だが、本当に党中央の方針や指示がまったく関係ないか、というとこれも考えにくい。 チャイナウォッチャーの間で流れている興味深い噂がある。この追徴税ラッシュは、7月に予定される三中全会で発表されるであろう大規模な税制改革と関連がある、というものだ。 この税制改革の大きな方向性は中央が地方により大きい徴税権限をあたえるということらしい。具体的には消費税の徴収が地方政府になる。今回の追徴税ラッシュは、この税制改革を前にした地方政府がテストケースとして税務調査を行っているからだ、という。 中国の目下の消費税は、増値税を基礎として、その上に消費品目に合わせた消費税が課され、中央が消費の方向性や生産品構造の調整を行い、国家財政収入を確保する形になっている。現行ではタバコ、酒、爆竹花火、高級化粧品、石油製品、宝飾・ジュエリー、ゴルフ用具やスポーツ用品、高級腕時計、割りばし、バイク、車、電池、塗料などが主に贅沢品に課されている。 だが中国ではこうした高級品の消費が急激に減少している。習近平の贅沢を戒める政治スローガンに対する富裕層の消費萎縮、経済低迷による中産階級の減少、庶民の生活困窮などが背景にある。