【心地いい家のつくり方】「選んで、捨てる」の実践を繰り返すことで、“好き”が定まっていく。〈ともさかりえ×行正り香対談〉vol.3
感性をオンに! 出合いは求めることでやってくる
行正 「これが好き!」というものは、食べるものでも音楽でも美術でも言葉でも何でも、一生懸命にアテンションをかけているからこそ出合えるのだと思います。感性の鋭い人でありたいと日々心がけているからこそ、好きなものと出合うチャンスが向こうから歩いてくる。ぼーっと過ごしていたら、恋に落ちる瞬間はやってきません。 ともさか 目の前にあっても、気づかないかもしれませんね。 行正 気づかないわね。人生のチャンスと同じだと思う。チャンスって、実は案外、誰しもに平等にやってきていて、それに気づくかどうかの違いなんじゃないかな。 ともさか 感性をオンにして、アンテナを鍛えておくことって大事ですよね。以前、撮影の現場である女優の大先輩がね、「このなかで、付き合うなら誰がいい?」って、すごくチャーミングにおっしゃったんです。私、びっくりしちゃって。“そんなこと考えていらしたなんて、なんて可愛いの!”と思った。その意識があるから、いつまでも可愛らしくていらっしゃるんじゃないかな。 行正 アテンションをかけていらっしゃるのね。恋に落ちる瞬間は、人間に対しても、モノに対しても同じなんです。しかも、突然やってくるものでしょ。旅をたくさんすることでも、予期せず「これが好き!」と思えるものに出合えると思う。出合いは求めていかないと。 ともさか 本当にそう思う。出歩かないとダメですね。 行正 旅して、歩いて、食べて、飲んで。動いて初めて「はぁ、落ちちゃった」という瞬間があるのよね。アマンリゾーツの創業者、エイドリアン・ゼッカーが手がけたホテルに行ったときにも、「これだ!」ってズドーンときたんだけど、調べてみたらゼッカーさんは伊豆の旅館などがお好きで、日本の照明器具に恋に落ちて、それを再現していることがわかった。動いたからこその発見でした。 ともさか そうやって「好き」を1つずつ見つけていけばいいんですね。 行正 そう、一遍にどんっと家具を揃えなくてもいいの。愛着のある椅子を1つ見つけたら、次はそれに合うテーブルを見つけるといった具合に、家は少しずつ完成していくんです。家って育てるものなんですよ。 ともさか 私も、家に置いて嬉しいと思える椅子と出合えたので、ここから育てていきたいです。 ともさかりえ/俳優。東京都出身。12歳でデビュー。ドラマ「金田一少年の事件簿」シリーズ(日本テレビ)でブレイク後、映画、舞台、また歌手としてなど、活動の幅を広げる。近作は映画『四月になれば彼女は』など。放映中のドラマ「新宿野戦病院」(フジテレビ)にも出演。ファッションブランド「MY WEAKNESS」のディレクターとしての顔も。
行正り香/ゆきまさりか 料理家・インテリアデザイナー。デンマーク親善大使に選ばれる(2017年)など、北欧のインテリアに造詣が深く、近年はインテリアのコーディネーターやリフォームプランナーとして多数の家作りに携わる。30冊を超える料理レシピ本のほか、家作りに関する著書『行正り香のインテリア』『行正り香の家作り』もロングセラーとなっている。 構成/八幡谷真弓 撮影/嶋田礼奈 ヘアメイク(ともさかさん)/伴まどか
行正 り香