【高校サッカー選手権】両雄の対戦は最後の最後にドラマ FW大石脩斗V弾で鹿児島城西が神村学園を下し8年ぶりの全国へ
令和6年度全国高校サッカーインターハイ(総体)全国準優勝を果たし、8年連続出場が懸かる神村学園か。それとも今季から高円宮杯U-18サッカーリーグ2024プレミアリーグWESTで戦い、8年ぶりの全国切符を目指す鹿児島城西か。近年、県内の覇権を争ってきた両雄の対戦は最後の最後にドラマが待っていた。 【フォトギャラリー】鹿児島城西 vs 神村学園 11月17日、白波スタジアムで行われた高校サッカー選手権の鹿児島県予選決勝。プロ注目のFW名和田我空(3年)を筆頭に抜群の攻撃力を持つ神村学園に対し、堅守の鹿児島城西がどのように戦うか注目されるなか、序盤から戦前の予想通りとなる。 3-4-2-1の布陣でテンポよくボールを繋ぎながら攻め込む神村学園に対し、鹿児島城西は自陣でブロックを作って応戦。シャドーに入る名和田に対しても徹底的にケアし、自由を与えない。「マンマークをつけたわけではない」と新田祐輔監督は話したが、流れの中でボランチのMF中村颯太(3年)が監視する形を取りながらキーマン封じを遂行した。しかし、名和田を止めても他にいるのが神村学園の強さ。圧倒的な速さを持つ右ウイングバックの金城蓮央(3年)や推進力に秀でたFW大成健人(3年)がサイドを突破し、ゴール前に何度も迫った。それでも最後は主将・GK藤吉純誠(3年)、CB浮邉泰士(2年)を中心にタフに守り、前半はスコアレスで折り返した。 後半に入っても攻める神村学園に対して堅守で応戦するなかで、鹿児島城西は徐々に速攻で相手陣内に入っていく回数が増える。最前線のFW大石脩斗(2年)が起点となり、サイドハーフの押し上げを促しながら厚みのある攻撃を展開。ゴールこそ奪えなかったが、前半以上に押し込む時間帯を作って最終盤に入った。 そして、迎えた77分。立て続けに迎えたピンチをGK藤吉が阻止した直後の出来事だった。右SBの福留大和(3年)が一気に駆け上がり、右サイドを深く抉る。相手のスライディングも間一髪ボールを浮かして外すと、ゴール前にライナー性のボールを送り込んだ。相手DFが2人寄せていたなかで大石が体を投げ出してシュート。「気持ちで押し込んだ」という右アウトサイドでの一撃がネットに突き刺さり、土壇場で鹿児島城西がリードを奪った。 アディショナルタイムは3分。神村学園の猛攻を耐える時間となったが、最後まで集中力を切らさなかった鹿児島城西が8年ぶり8度目の選手権出場を手中に収めた。 新田監督がチームを率いて7年。大迫勇也(神戸)らを育てた前任の小久保悟前監督からバトンを受けてから、選手権には一度も出場できていなかった。愛言葉は“打倒神村学園”。ライバルとは真逆の堅守速攻とハイプレスを徹底的に落とし込み、牙城を崩しにかかった。思うように結果が出ず、心が折れそうになったことは一度や二度ではない。今夏のインターハイ予選も決勝でリードを奪いながらも、後半アディショナルタイムに追い付かれて逆転負け。何度も煮湯を呑んできたなかで、ようやく掴んだ全国行きの切符。モチベーションは高い。 「できれば1発目ぐらいから強いところがいいですね。(守備が特徴のチームだと)やっぱりペースが崩れてしまう。このためにやってきているから、 できればその強いところとやりたい。試合の最初からスイッチが入る」とは新田監督の言葉。重い扉を開いた鹿児島城西は気持ちを新たに、久々の全国大会に足を踏み入れる。 (写真・文=松尾祐希)