伝家の宝刀「なぜを5回繰り返す」の正しい運用法
生成AIやデジタル機能の進化、ペーパーレスによって仕事にかける労力は軽減されるはずなのに、なぜかタスクが終わらない……。そんな悩みを抱えるビジネスパーソンは、多いのではないでしょうか。トヨタグループのデンソーで徹底的に仕事の「ムダ」を減らし、「成果」を最大化する仕事術を学んだ森琢也氏によるカイゼン術の6回目。 「空欄のあるロジックツリー」の一例。大元の問いは「なぜ新規顧客が増えない?」。空欄があると、ついつい埋めたくなるという人間の心理を利用している ※本記事は『トヨタで学んだハイブリッド仕事術』(森琢也著、青春出版社)の一部を抜粋・再編集したものです (森琢也:株式会社クック・ビジネスラボ代表取締役、中小企業診断士) ■ なぜ「なぜを5回繰り返す」のか? トヨタグループのカイゼンの代名詞とも言えるのが「なぜを5回繰り返す」でしょう。ただ「なぜを5回繰り返す」は、その意味を正しく理解して実践するのは意外に難しいものです。そこで、なぜを繰り返す意味合いを考えてみましょう。 例えば、みなさんが通勤で使っている自転車が思うように加速しないので原因を調べてみたら、タイヤの空気が抜けていたという場面を思い浮かべてください。 タイヤに空気を入れたら、自転車の乗り心地も解消されたので「表面的には」一件落着です。トラブルへの対処としては、これで問題ないように思えます。しかし、果たして本当にこれでいいのでしょうか。 みなさんに考えていただきたいのは、このタイヤに空気を入れる、というアクションで「いったい何をカイゼンしたのか」ということ。「表面的には」と書いた理由でもあります。 仮にタイヤに空気を入れた1週間後に再度、同じようにタイヤの空気が抜けていたらどうでしょうか。タイヤに空気を入れたという最初の対応は、「空気不足という現象に対処しただけ」で、根本的な問題解決には至っていなかったことになります。 不具合発生の根本原因はタイヤの空気不足ではなく、別のところにあるとしたらどうでしょう? ■ 探り当てた原因に再度「なぜ?」をぶつけて深掘りする 「タイヤの空気が不足する本当の原因(=真因)」を探るために、「なぜ」を繰り返す必要があります。 「自転車が加速しない→『なぜ』加速しないのか→タイヤの空気が不足しているから」にとどめず、「『なぜ』タイヤの空気が不足しているのか」と、さらに「なぜ」を繰り返して原因を考えていきます。 すると、「空気が漏れているから」→「なぜ、漏れているのか」→「空気を入れるバルブ部品の虫ゴムが劣化していたから」→「なぜ、劣化に気づかなかったのか」→「定期点検をずっと先延ばしにしていたから」というように、根本原因にたどり着くことができます。 根本原因を対処できて、初めて「カイゼン」できたことになるのです。