伝家の宝刀「なぜを5回繰り返す」の正しい運用法
■ 正しく「なぜを5回繰り返す」ためには この「なぜを5回繰り返す」という「なぜなぜ分析」は、問題の根本的な要因を抽出するために有効な手法です。 問題が発生した際に、まず「なぜ、その問題が発生したのか?」を考え、探り当てた原因に再度「なぜ?」をぶつけて深掘りしていきます。これを繰り返していくことで、根本的な原因、真因を見つけ出すのです。 「なぜを5回繰り返す」のは簡単なようで、意外と習慣化が難しいものです。スムーズに使いこなすためのステップを説明します。 ■STEP1 下準備として、何が問題なのか(What)を洗い出す ついつい、すぐに「なぜなぜ」を始めたくなりますが、逆に思考が散らかって立ち往生することがあります。そこで、「何が問題なのか(What)」を明確にすることから始めましょう。 具体的には「分ける」と「分かる」を使います。 「自転車が思うように加速しない」という事象を、例えばプロセスで分けると、(1)ペダルを漕ぐ→(2)ギヤが動く→(3)チェーンが回る→(4)タイヤが回る→(5)地面を押し出すといった感じに分けることができます。この中で、(1)から(4)に問題がなければ、(5)があやしいと推測できます。 プロセス分解以外に、要素分解もおススメです。「利益が下がった」というトピックであれば「売り上げ低下」と「費用(コスト)増加」が上げられ、さらに売り上げも費用も要素を分解していくことができます。 なお、この要素分解をわかりやすく枝分かれの図で書いていく手法をロジックツリーと言います。 漠然とした問いには、漠然とした答えしか出てきません。慣れないうちは、やみくもに「なぜ」を繰り出すのではなく、下準備として、「何が問題なのか(What)」を洗い出し、対象を明確にすると、「なぜを5回」の精度が高まります。
■ 問題の真因に近づくスピードを高めるには? ■STEP2 思考の深さと広がりを意識する 「なぜを5回」を始めると、多くの方が素直になぜを繰り返し、一方向に深掘りしようとします。しかし、ここでも前回でお伝えした「水平質問」が大切です(「水平質問」→「垂直質問」で問題の核心に迫る十字カーソル質問法)。深さも大切ですが、広がりも意識することで、結果として真因把握のスピードが上がります。 ■STEP3 「都合の悪い情報」を探してみる 往々にして、我々は自分に都合の良い話ばかりを集めたがり、結果として「そうなるだろう」というバイアス(偏り)が働きやすくなってしまいます。 例えば、電気自動車が環境にやさしいと思い込むと、電気をつくる際に発生する二酸化炭素や劣化したバッテリーの交換コストなどに目を向けず、良い面ばかりに目を向けたくなります。 そんな時ほど、自分の仮説や主張に対して都合の悪い情報も探してみることが大切です。 一般的には批判的思考(クリティカルシンキング)と呼ばれるアプローチですが、結果として客観性や論理性を高め、問題の真因に近づくスピードを高めることができます。 もしかしたら、自転車が思うように加速せず、タイヤの空気が抜けていたのは、自分自身の体重増加が原因だったかもしれない、ということです。 「なぜを5回繰り返す」は外資系コンサルティング会社も注目するようなトヨタの「伝家の宝刀」です。ぜひみなさんに実践し、習慣化していただきたいので、ここではさらに、「なぜを5回繰り返す」の習慣化を妨げる要因と、その対策をまとめました。参考にしてみてください。