年末年始に読みたい「ビジネス力&教養力」爆上げの3冊!書評のプロが選んだオススメ本とは?
● 成功のカギとなるのは 「ゆっくり考え、すばやく動く」 著者らが言うには、どんなプロジェクトであっても、成功のカギは「ゆっくり考え、すばやく動く」こと。すなわち、拙速にプロジェクトの実作業に着手する「前」、計画段階にたっぷりと時間をかけることが重要ということだ。 シンプルなテーゼだが、ほとんどのプロジェクトが「すばやく考え、ゆっくり動く」。結果、予算が不足したり、納期などの期日に間に合わなかったり、アウトプットの質が低くなったりする。著者らの、1万6000件以上の大型プロジェクトを対象にした調査では、予算超過か工期遅延、便益過小(結果が役に立たない)、またはそれらの組み合わせに至るプロジェクトが、実に99.5%を占めたという。 実作業の前にとてつもない労力と時間をかける例として著者らは、ピクサー・アニメーション・スタジオの作品制作プロセスを紹介する。 ピクサーでは、最初の漠然としたアイデアからあらすじを書いた段階、あらすじを脚本に仕上げた段階、それぞれで社内のクリエエイターたちからフィードバックを受け修正するというラウンドを何度か繰り返す。 脚本が出来上がったら、それをもとにラフな動画を作成。その試写を社内で行い、多くの社員からフィードバックを受け、修正する。それを8回は繰り返すのだという。それが済んで初めて、ピクサー自慢の最先端コンピュータを使った本番のアニメーション制作がスタートする。それ以前の段階でほとんどの問題点がクリアになっているため、制作はスムーズに進む。 そこまで時間をかけられない、というケースもあるだろう。だが、時間の問題ではない。要は、発生するであろうさまざまな問題を事前に想定し、それらに対処しておくことが大事なのだ。 年明けから何らかのプロジェクトに携わる人もいるだろう。本書を参考に、慎重に「ゆっくり考える」ことを念頭に置いて臨んでみてほしい。 ● 「現実とは何か」を 深く考察する大著に挑戦! 2024~25年の年末年始は、大みそかと三が日が普段の平日にあたり、若干の調整で9連休が実現する。里帰りやら初詣やらで、せわしない人もいるだろうが、比較的時間がとれたら、分厚い「大著」に挑戦してみてはどうか。 というわけで、次に紹介するのは池谷裕二著『夢を叶えるために脳はある』。672ページだ。「700ページ弱!」と恐れをなす必要はなく、著者が高校生を対象に行った連続講義の記録だけに、文章自体は読みやすい。少なくとも私は、内容の面白さにぐいぐい引き込まれるように読み進めることができた。 著者の池谷裕二氏は脳研究者で、東京大学薬学部教授。現在、脳にAIを埋め込む、脳同士をつなげるなどの先端研究を「脳AI融合プロジェクト」で進めている。