散逸が懸念される女性史関係資料、保存・公開の動き相次ぐ 高良留美子と加納実紀代の資料室オープン
日本は欧米に比べてアーカイブ施設の設立が遅れている。とくに女性史関係の資料を保存する施設がとぼしい。1980年代から始まった〝女性史ブーム〟を牽引した研究者や活動家たちが相次いで亡くなる昨今、貴重な資料が散逸することも多く、アーカイブの設立が望まれる。その例として、地域の女性史研究会の資料を未来に向けて保存・継承するための私たちのグループの実践と、女性史研究者・表現者の資料室二つを紹介したい。(敬称略、ノンフィクション作家、女性史研究者=江刺昭子) 【写真】圧巻! 女4代の歴史35年かけ刻む 発掘続けた高良留美子さん
▽ようやく寄贈にこぎ着けた休眠資料 1988年から私が代表を務めている神奈川県の女性史研究グループ「史(ふみ)の会」は、これまでに研究誌6冊と、県にゆかりの女性356人のミニ評伝集『時代を拓いた女たちⅠ、Ⅱ、Ⅲ集』を刊行した。評伝集は地域で多様な活動をした女性たちの遺族や関係者に取材し、資料を集めて執筆した。著名な人ばかりではないので資料収集は困難をきわめた。 それらの資料と電子データ目録を2014年に、かながわ女性センター(現・かながわ男女共同参画センター)付属の図書館に寄贈した。ところが翌年、女性センターの規模が8分の1に縮小されて移転。付属図書館は県立図書館に吸収された。書籍や冊子だけでなく、雑誌や新聞記事のコピー、取材テープ、取材メモ、写真、書簡など雑多な形態の資料の集積である「史の会資料」は、ほとんど人目に触れることなく書棚に眠ることになった。 これらを何とか、興味がある人や研究者につなげたいと思い、私が資料選定委員をしている国立女性教育会館(NWEC、埼玉県嵐山町)の女性アーカイブセンターに3年越しでお願いして、地域女性史の資料としては初めて寄贈を了承してもらった。予算も人手もないということで、センターの方法に従って史の会会員が半年がかりで3157点の資料を整理、デジタル目録データを入力し、22年10月に寄贈を終えた。現在、Ⅰ集とⅡ集の目録は、女性アーカイブセンターの「資料群46」に「史の会資料」として公開されており、追ってⅢ集も公開される予定だ。NWECのホームページから閲覧できる。 ▽ワクワクするような宝の山