そうそう、この味! 新生「薪鳥新神戸」の焼き鳥にフードライターも歓喜
「今のところ、以前とそれほど変えてはいないんですよ」と言いつつ、まず、皿に置かれたのは、薪焼き鳥の名刺代わりでもある高原比内鶏の“腿(もも)肉”。弱火でじっくり燻すように焼き上げたそれは、狐色の光沢を放ち、薪ならではの薫香を纏って焼き鳥ラバーの胃袋を誘惑する。焼きたてをすかさず頬張れば、パリッと軽やかな皮の内側から溢れ出る肉汁に思わず頬が緩む。舌に広がる澄んだコクに、そうそう、これこれ!この味!と心の中で得心する。相変わらずのおいしさだ!
いや、心なしか表面の焼きはよりしっかりとして身にしまりがあり、さらに焼き鳥感が増しているように感じられる。もちろん、ジューシーさは変わらない。
味の余韻に浸るまもなく置かれたのは、鶏肉と白レバーをミルフィユ状に重ねた一皿。これは新作だ。以前も松風地鶏のささみをお造りにして出してはいたが、今回は高坂鶏に変え、白レバーも加わって一段とパワーアップ。この白レバーが逸品。
聞けば、レバーも高坂鶏だそうで「血液の成分をコントロールすることで健康的な鶏に育つ高坂鶏は肝臓の状態も良好。だからおいしいんです」と疋田さん。その言葉を裏付けるように、旨味にコクがありながらもよどみなく綺麗な味だ。煮切った薄口醤油と昆布を入れ3日ほど寝かせたとりわさ醤が上からかかっている。そのままでもいいが、カワハギの肝巻きのように、胸肉でレバーを巻いて食べてもなかなかいける。
続いて山口県長州鶏のレバーが登場。レアに焼き上げながら身にハリがあり、プルンとした食感もそのままに、口中でスッととろけるなめらかさが実に絶妙だ。その後、マッシュルームの薪焼きや鶏焼売のお椀でひと息ついたところで、今度は高原比内鶏のせせりと、ハリッサをのせた振袖の串焼き2本が続けてお目見え。
部位は日によって変わるそうで、ソリレスや胸肉に変わることもあるそうだ。口直しに出た鶏スープベースの茶碗蒸しには、薪で焼いた百合根を忍ばせてあり、何気ない一品にも薪の特徴をそれとなく生かしている。