そうそう、この味! 新生「薪鳥新神戸」の焼き鳥にフードライターも歓喜
コースも中盤に入ったところで、今度は手つきのザルに入れたハツが薪の炎に翳された。豪快に炙り焼く様子は、薪焼きならではだ。
「こうすると、炭火に比べて短時間で火が入るので、旨味を逃しにくく固くならないんですよ」ザルを揺りながら疋田さんが一言。加えて、塩水に3~4時間つけてから焼く一手間もおいしさの秘訣だろう。シコシコと歯切れ良い食感には薪の香りがよく似合う。
ミモレットチーズを削りかけた蕪の薪焼き、薪焼きトーストに鶏のリエットを塗った鶏パン、海老芋饅頭と芹のおひたしの盛り合わせが出て、後半の串2本は稀少部位のハツモトのタレ焼き、そしておなじみのネギマが登場。
といっても、ただのネギマではない。高坂鶏の皮で高原比内鶏を巻いた、いわばハイブリッド串だ。疋田さんによれば「高坂鶏は皮が特においしい。厚みがあり、脂ものっていて薪との相性がとてもいい。対して高原比内は身の旨みが濃いので、この2つを合わせてみたんです」とのこと。一緒に刺した長ネギが皮の脂を受け止め、いい仕事ぶりを見せている。
そして、締めの食事はお待ちかねの薪焼きそぼろご飯。席数が増えた分、土鍋もより巨大に。なんと七合炊きの土鍋を信楽の雲井窯に特注。炊き上げる米6合に対しおよそ1kg余りの鶏挽肉を炙って混ぜいれるのだから、見るからにダイナミック。
米は程よい粘りと弾力性があり、あっさりした旨みの「あきたこまち」。炊き立ての風味豊かな白飯に薫香を纏った塩味のそぼろは、シンプルながら最強の組み合わせ。一杯目は、炒めたニラをのせてそのままいただき、お腹に余裕が有れば、ぜひおかわりを。2杯目はうずらの卵かけ、3杯目はカンズリと青ネギ等々やりすぎない味変も気が利いている。
「再オープンしたばかりなので、コースの内容は前とあまり変えないようにしています。でも、炉窯が2つになったので、火加減の異なる野菜と肉を別々に焼けるようになり、よりベストな状態で焼けるようになりました。熱源に余裕ができた分、片方を熾火にしてみるとか、より薪焼きの可能性に挑戦していきたいですね」そう窯に薪をくべながら笑顔で語る疋田さん。