塚地武雅の強みは“フィット力”? 『虎に翼』『新宿野戦病院』で見せる“異なる顔”
放送中の朝ドラ『虎に翼』(NHK総合)と『新宿野戦病院』(フジテレビ系)の両作に出演している俳優たちの演技のギャップには興味深いものがある。 【写真】『虎に翼』で塚地武雅が演じている雲野六郎 この2作はタイプがまったく異なるどころか、ほんとど対極にある作品だ。両作に出演している誰もがテイストの違うパフォーマンスを展開しているわけだが、個人的にとくに注目なのが、塚地武雅である。 『虎に翼』で塚地が演じているのは、雲野六郎という弁護士だ。ヒロイン・寅子(伊藤沙莉)が弁護士時代に働いていた「雲野法律事務所」の代表である。人情に厚い性格の持ち主で、それゆえにシビアな案件を引き受けてしまいがち。人の好い人物だ。 いっぽう、歌舞伎町に佇む「聖まごころ病院」を主な舞台として物語が展開する『新宿野戦病院』で塚地が演じているのは、堀井しのぶという看護師長である。古びた「聖まごころ病院」にやってくるのは、さまざまな事情を抱えた患者たち。そんな人々の誰に対してもフラットに接することのできる人物で、院内ではムードメーカー的なポジションを築いている。 先述したように、『虎に翼』と『新宿野戦病院』は対極にある作品だが、多くの出演者が両作に出演している。たとえば、前者で戦死した寅子の夫・優三を演じていた仲野太賀は、後者ではチャラチャラした美容皮膚科医の高峰享として登場。そのギャップには視聴者の誰もが面食らったものだろう。 寅子の父・直言を演じていた岡部たかしは、パパ活を夢見る小児科医に。寅子の同志である梅子役の平岩紙は、婚活に励むソーシャルワーカーを。寅子の“お義母さん”となったばかりの余貴美子は、元アメリカ軍医のヨウコ・ニシ・フリーマン(小池栄子)の母親役で出演。さらには、「雲野法律事務所」の弁護士・岩居を演じる趙珉和が、「聖まごころ病院」に大きな問題を持ち込む男の役で登場した。 これだけの俳優たちがまったく別人の役で同じ作品に名を連ねるというのは、愉快な気持ちを超えて痛快。俳優とは、あらゆる人間の人生を歩む職業だ。これを生業とする者たちの凄みを、まざまざと見せつけられているところ。そんな面々の中のひとりが、塚地武雅というわけである。 塚地といえば言わずと知れた人気お笑い芸人であり、俳優としても認知されるようになってからすでに20年以上が経過している。映画『間宮兄弟』(2006年)やドラマ『裸の大将』シリーズ(フジテレビ系)などの代表作を早くに得て、『新宿野戦病院』と同じく宮藤官九郎作品である『季節のない街』(2023年/ディズニープラス)での好演も記憶に新しい。むしろ視聴者の世代によっては、俳優のイメージのほうが強かったりもするのではないだろうか。