塚地武雅の強みは“フィット力”? 『虎に翼』『新宿野戦病院』で見せる“異なる顔”
塚地武雅が『虎に翼』体現する”アジ”のあるおじさん像
『新宿野戦病院』の面々との間で繰り広げられているハイテンポな会話劇からも見て取れるように、個性的なキャラクターを演じてみせれば彼の右に出る者はそういないだろう。演じ手として、唯一無二の個性とアジを持っている。そのいっぽう、『虎に翼』で担っているのは、個性的な役どころだというわけではない。雲野六郎は「弁護士」というスペシャリティを除けば、どこにでもいる好好爺といった人物だ。 同作ではさまざまな問題が描かれるが、主眼が置かれているのは、それらと対峙して成長していくヒロイン・寅子の物語だ。複数の人間ドラマを同時に展開させながらも、やはり重要視されるのは彼女の人生がどのようなものであるのか。各シーンごとに何が大切なのかを的確に捉え、自分の役割に徹することが一人ひとりの俳優には求められている。自分が演じるキャラクターの主張に囚われる者たちばかりでは、半年間もの放送に視聴者はついていけないだろう。 作品の世界観に適切なかたちでフィットするというのは、想像以上に難しいものなのではないかと思う。とくに、強い個性を持った人物や、名前の立っている人物ならなおさら。『虎に翼』と『新宿野戦病院』における塚地の演技の振り幅ももちろん見ものなのだが、“フィット力”とでも呼ぶべき彼の力こそ注目だと、筆者は思うのだ。
折田侑駿