改正入管法が全面施行、施設収容や送還はどう変わる?世界の難民避難民は過去最多に
6月20日の「世界難民の日」を前に、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は13日、世界の難民や国内避難民の数が1億2000万人に達したと発表した。日本の総人口にも迫る数の人々が、紛争や迫害によって故郷を追われている中、難民の受け入れをめぐる問題は各国で課題となっている。(荒ちひろ=GLOBE編集部記者) 【写真】入管施設収容中に亡くなったウィシュマさんの遺影を手にする妹のポールニマさん
難民申請、3回目なら強制送還も
先進各国と比べ、難民認定率が著しく低い日本では6月10日、改正出入国管理難民認定法(改正入管難民法)が全面施行された。在留資格を持たない外国人の入管施設への収容や送還に関するルールを見直す改正法で、2023年6月に成立していた。全面施行で何が変わり、どんな課題が残るのか。 改正法では、難民認定を申請中の人は送還を停止するというルール(送還停止効)に、例外が設けられた。過去に2回不認定とされ、3回目以降の申請を行っているなど人について「相当の理由がある資料」を提出した場合を除き、例外的に送還を可能とする規定だ。 出入国在留管理庁(入管庁)は、「ごく一部ではあるものの、難民認定申請を繰り返すことによって、退去を回避しようとする人がいる」と、この例外規定の必要性を説明する。一方で、日本に難民として保護を求めている人を、迫害の恐れのある国に送還する可能性があるとの懸念も根強い。 名古屋高裁では今年1月、過去に難民申請を4回退けられたミャンマーの少数派イスラム教徒ロヒンギャの男性について、難民と認めるよう国に命じる判決が出た。全国難民弁護団連絡会議代表で、男性の代理人も務めた渡辺彰悟弁護士は、「『3回目(以降の申請)だから難民ではない』というのは、まったく状況と違っている」と批判する。 3回目以降の申請での「相当の理由がある資料」の提出時期について、入管庁は3、4月に行ったパブリックコメント(意見募集)への回答で、「迅速な送還に支障を来す」として申請時の提出しか認めない、との見解を示した。 1月の名古屋高裁のケースでは、原告側が出生地に関する証拠の提出に約8カ月かかった点について、国側は「不自然である」として信用性がないと主張した。だが判決では、「ミャンマーで息を潜めて暮らすロヒンギャである原告の母が、40年以上も前の書類を探し出し、写真を送信したり、現物を送ったりすることの困難さを考えれば、遅いということは到底できない」と判断された。 このように資料の提出には時間が必要な場合、また、3回目以降の申請後に新たな証拠が得られたり、情勢が悪化したりする場合もあり、「3回目以降の申請時に提出した書類しか認めない」とする入管庁の見解には、疑問も残る。