改正入管法が全面施行、施設収容や送還はどう変わる?世界の難民避難民は過去最多に
そもそもの前提として、難民を迫害の恐れのある国へ送還することは、難民条約第33条第1項をはじめ、国際法上の原則(ノン・ルフールマン原則)で禁止されている。日本は1981年に難民条約に加入しており、この原則を守る義務がある。 申請回数を制限して送還を可能にしている国はほかにもあるが、日本の場合、そもそもの難民認定率が極めて低く、「難民として認定されるべき人が、認定されない制度が運用されてきた」との批判がある。1月の名古屋高裁のほか、昨年12月の東京高裁、今年5月の名古屋地裁などでも、国の難民不認定の判断を覆す判決が相次いでいる。
難民申請者にパスポート取得の命令 さらなる迫害の恐れも
また今回の全面施行で、国は、退去令を受けた人に対し、送還のために必要なパスポートの発給などのために大使館に行ったり、書類を提出したりするよう命じることができるようになった。 命令に違反した場合、1年以下の懲役などが科される罰則がある。難民申請者にとって、本国の大使館は迫害の当事者である可能性があるが、例外の規定は設けられていない。この問題に関するパブコメに対し、入管庁は「個別に判断する」と回答した。
収容に代わる「監理措置」
入管施設への収容に代わり、監理人のもと社会で生活できるようにする「監理措置」制度も新たに設けられた。だが、監理人には入管庁への届け出や報告の義務が課されており、これまでの仮放免制度で保証人を担ってきた弁護士や支援団体からは「利益相反や守秘義務から、監理人にはなれない」との声が上がる。 そもそも2023年の法改正の主眼は、数年にも及ぶことのある入管施設での収容長期化の是正のはずだ。2019年に長期収容に反対してハンスト中だったナイジェリア国籍の男性が餓死した事件がきっかけだった。同様の改正案が審議されていた2021年3月には、スリランカ出身のウィシュマ・サンダマリさんが収容中に亡くなり、入管の管理体制が非難された。同年5月、このときの改正案は採決を見送られた。 2年越しで成立したのが今回、全面施行された改正法だ。 収容に代わる方法として「監理措置」が創設され、退去令が出る前の人に対しては就労も可能にする仕組みとされた。だが、施行規則をみると、就労の許可を申請する時点で勤務先や労働条件の詳細を提出する必要があるなど、「実際に使えるような規定ではない」と支援関係者からは落胆の声も聞かれる。 難民申請者の面接の際、代理人の同席や録音・録画が認められず、ブラックボックス状態であることも、長年、問題視されてきた。改正法の付帯決議では、「手続きの透明性・公平性を高める措置について検討を加え、十分な配慮を行うこと」とされたが、具体的な取り組みはみられていない。